砂上の楼閣 2






回収した骨・・・頭蓋骨のカケラひとつひとつを繋ぎ合わせる。
綱手はその地味な作業をもう三日もの間続けていた。
その間、捕らえられた不審者を何名か尋問したが犯人には到底及ばない小物ばかり。
綱手は溜息を吐きつつ、おおよそ復元された頭蓋骨の一つを手に取った。
足りない部分は沢山ある。
不完全な出来になることは十分に承知しているが・・・何の手がかりの無い今、こうする他には被害者である少女達の身元を明らかにする術は無い。
被害者には何らかの共通点があるはずだ。
どうしてもそれを見つけたい。
綱手は骨に沿い、シリコンを使って筋肉の復元を始めた。
仕上げに粘土を使って表情を付ける。
「はて、何処かで逢ったかな?」
最初に仕上がった少女の顔は、綱手の知る誰かを想像させた。
首を傾げながら二人目に取り掛かる。
三人目の復元を終えた時、綱手は作業していた手を休め、おもむろに引き出しから忍者登録名簿を取り出した。
最後の頭蓋骨は手付かずのままだが、もうそれ以上の作業は無意味だろう。
分厚いファイルの、下忍の項を開けると目的の少女はすぐに見つかった。
風変わりな桃色の髪が印象的だ。
初めて逢ったのは・・・そう、確か木の葉病院だったと思い出す。

春野サクラ 十二歳

添付されている写真を見つめ、次に机の上の少女達を見る。
「間違い・・・なさそうだな。」
綱手は自分の予想がほぼ間違いないことに深い溜息を吐きつつ、額に手を当てた。
担当上忍は調べるまでもない。
こちらは良く知っている人物だ。
パトロールのシフト表をなぞる白い指が、ある名前でピタリと止まる。

六歳で中忍試験に合格。
在籍中にその大半が命を落とすといわれている暗部経験者。
師は四代目火影。
木の葉の里きっての、天才忍者。

彼の名は・・・・・



はたけカカシ




















五代目火影の前に立たされたサスケはガラにもなく緊張していた。
一緒に呼ばれた黄色い綿毛頭の少年とは違って、火影の部屋に入ることなど初めてだったから。
アカデミー時代、悪戯の度が過ぎてよく此処で叱られていたナルトとは、違う。

「綱手のバアちゃん、何の用だってばよ−?」
綱手が据わる火影の机に身を乗り出して、緊張のカケラも無いナルトが訊ねる。
いつもなら『バアちゃん』などと呼ぼうものなら即座に拳の制裁を加えるところなのだが・・・今の綱手にそんな余裕はない。
サスケの手前、軽く咳払いをしてから話を進めた。
「何の用って任務に決まっているだろう、馬鹿者!」
「任務?!それってば、それってばスゲー任務?」
「あぁ。Bランクのな。」
そう告げた途端、二人の目の色が一瞬にして変わった。
Bランクの任務と聞いてナルト、サスケ共々息を呑む。
通常、下忍に与えられる任務ではない。
Bランクともなると忍び同士の戦闘が8割以上の確率で起こりえるのだから。

   どうしてそんな任務を下忍の俺達に?
   しかも呼び出されたのがオレとナルトの二人だけってどういうことだ?

通常任務は四人一組と決まっている。
それなのに、此処に居るのは下忍に成りたての・・・実力も経験も乏しい二人。
自分達の実力を冷静に把握しているからこそ、サスケは高ランクの任務に小躍りしているナルトのように単純には喜べない。
何かきな臭いものを感じてその眉間にシワを寄せた。

「この二ヶ月ほどの間に十から十五の年頃の少女ばかりを狙った殺人事件が起こっている。今までの被害者は五人。」
「・・・五人も?」
それにしては噂を聞かないとばかりにナルトとサスケはお互い顔を見合わせる。
「被害者のほとんどが廓の子でね。」
復元した少女の顔をもとに聞き込みをしたところ、そういう結果となった。
廓の店主に言わせると引き取ったばかりの(買い取った、が正解だろうが)少女達が逃げ出すことは珍しいことではなく、事件がらみとは考えない。
よって、捜索願など出さないという。
各店独自に逃げた少女を連れ戻すといった組織を持っており、その者達に任せるのだそうだ。
「犯人に対する手がかりは一切ない。忍びだということを除けば、な。」
「忍び?」
ナルトが驚いたように聞き返した。
「その可能性が高いんだ。しかも私はかなりの腕利きだとみている。何処の里の者かもわからない。」
「この里で起こってるんだから一番可能性があるのは木の葉の忍びじゃねーか。」
立場上言いにくいことをサスケにズケズケと言われ、綱手は思わず苦笑を漏らす。
部屋に入ってきたばかりのあの緊張は何処へやら、だ。
「そうだよ。身内さえ疑わなければならない状況なんでね、上忍以外にはこの件は告げていない。」
「・・・ちょっと待て。」

   木の葉の里の腕利きとなると、当然『上忍』だ。
   その最も怪しい上忍にのみ事件の情報を流してる?
   矛盾してねーか?

納得しかねているサスケの表情に綱手は破顔した。
「頭の良い子は嫌いじゃない。」
訳がわからず二人を交互に見ているナルトを置き去りに、綱手はサスケに向かって言葉を続けた。
「最悪、ウチの里の忍びが犯人だったとする。その場合レベル的に上忍か暗部に違いないんだが・・・暗部は私の直属だからね、行動は完全に把握出来ている。お前の考えているように最も怪しいのは上忍だ」
「だったら何故?」
「同じ上忍に見張られてるとなると犯人も慎重にならざるを得ない。それに下手に情報を知っていれば逆に動きにくいモンなんだよ」
犯人の動きを止め、その間に尻尾を掴もうというのか。
サスケは軽く頷いて話を変えた。
「それでオレ達は何を?」
「護衛をしてもらいたい人がいる。お前たちも良く知っている子なんだが・・・」
「えぇー?護衛?」
ナルトが不服そうな声を上げた。
「オレが犯人を捕まえてやるってばよー!」
今までの話の流れからしてもっと重大な任務が与えられると思ったのだろう。
護衛と聞いて楽な任務だと判断したのか、粋がるナルトに綱手は現実を突きつける。
綱手が黙って差し出した二枚の写真を見た瞬間、ナルトとサスケの顔が強張った。

今回の事件発覚のきっかけとなった少女の、無残な遺体。
ドラム缶一杯の肉塊。

「・・・腕利きの忍びだといっただろう?いいか。護衛とはいえ、これはBランクの任務だ。死にたくなければ私の命令に従え。」







to be continue








2004.06.27
まゆ