ホワイトアウト 1











   私は『サクラ』



   ハルノ サクラ















「あ!」

びくんと大きく仰け反った少女はそのままカカシの胸へと崩れ落ちる。
痛みのあまり意識を失うことこそなくなったものの、それでもまだ辛そうに息を吐くサクラをカカシは優しく抱きしめた。
「ごめん。酷くした・・・」
軽く首が横に振られる。
ぬけるような白い肌に薄紅の髪がサラサラと流れ、例えようの無い匂いがカカシを包み込んだ。
コロンとか、そういう類のものではなく、しいて言えばそれはサクラの体臭なのだろう。
淡い、花のような・・・サクラの匂い。
この匂いが男を狂わせるのだ。
取り付かれた男は例外無く破滅の路を辿る。
そうと知っていてすでに手放せなくなっている自分に、カカシは自嘲の笑みを浮かべた。

   所詮オレも俗物だよねぇ。
   ま、落ちる処まで落ちてやるさ・・・

サクラがカカシの身体の上でやんわりと上体を起こすと、先ほど注がれたばかりの白濁した液体が内股を伝って溢れ出す。
「ぁ・・・」
慌ててサクラは身を捩るがカカシはそれを許さなかった。
まだ閉じられずにいた内股を無骨な男の手が無遠慮に撫で上げる。
自分のものであった粘質の液を絡めて蠢く指は、更に奥を目指した。
達したばかりのまだひくつくソコに強引に捻じ込み、植えつける。
「零しちゃ、駄目デショ?」
からかいを滲ませた男の低い声。
その声を合図に、今、サクラに再びとどまることの無い悪戯が繰り返されようとしていた。
「あっあっ・・あ!」
指の動きにあわせて大げさなほどの反応を示す愛しき少女は、もうすっかり自分の色に染められている。
耳をくすぐるサクラの喘ぎ声にカカシは満足気に笑った。






毎夜行われる、カカシの強引な行為。
それは今では何も考えずに済む、サクラにとっての唯一、幸福な時間だった。

   最初に誘うような行動をとったのは私。
   そう命令されたから。

   任務、だったのにね。

肌を合わせる回数を重ねるうち、そんなことはどうでも良くなった。
全てを忘れて・・・ずっとこのまま二人きりでいれたらいいのにと幾度も考えてしまう。

   全てを忘れて?

身勝手な考えにサクラは失笑した。
それにカカシにしてみれば自分と過ごす時間に大した意味など無いのだろうし、考えるだけ虚しいことだ。
しかし身体こそ強引にねじ伏せられてはいるものの、カカシの指は随分と優しく自分に触れる。
それに覗き込んでくる色違いの瞳もまた優しいことを否定できない。
過去の・・・自分を陵辱した、穴があれば何だっていいという男や毛も生え揃わない子供じゃないと興奮しないという変態とは明らかに全てが違っていた。

   だから勘違いしてしまうのよ・・・
   愛されてるなんて思っちゃう。

今も自分を抱えたまま眠る男の顔をサクラはそっと見上げる。
自分の中に湧き上がる『好き』という気持ちは、ウィルスのようにいつの間にかサクラの細胞の一つ一つに伝染していた。
胸の一番奥は絶えず微熱を伴い・・・サクラは上手く対処しきれず途方に暮れる。

『カカシの写輪眼を抉り出し持ち帰ること』

それが今のサクラに課せられた最重要任務だ。
果たせないまま・・・すでに2ヶ月が過ぎようとしていた。
上からの風当たりは強くなる一方でこれ以上待ってはもらえそうに無い。

   どうしよう・・・

サクラは瞳を伏せて短く息を吐いた。















2004.01.29
まゆ