pussy cat 3





「あのぉー・・・サクラさん。」

家を出てすぐの角を曲がった所で呼び止められたサクラは首を傾げた。
「はい?」
一応返事をしてみたものの、目の前の人物に心当たりが無い。
知らない人だ。

   ま、まさか・・・またご飯粒ッッ?!

サクラは両手で顔に触れた。

   よし!ついてない。

挙動不審なサクラの前でコホンと咳払いをしてから男は改まった口調で問いかけた。
「今日、任務が終わったら食事でもしませんか?」
何を言われたのか、すぐには理解出来なかった。
サクラは頭の中で反芻して男の発した言葉の意味を考える。

   食事・・・。
   コレってもしかして・・・デ、デートの誘い?!
   そんなの困る。

キッパリと断ろうと口を開きかけた時、いのの言葉が頭を過ぎった。

   確か・・『手当たり次第に愛想良く!』だったわよね。

「すみません。今日・・任務が何時に終わるかわからないし・・また今度誘ってもらえますか?」
特上の笑みを浮かべてやんわりと断ってみる。
「分かりました。また今度是非!約束ですよ!」
男の手に両手を包み込まれ、そのままぎゅっと握り締められる。
暫くそうして見つめてきた後、男は振り返りつつもサクラの前から立ち去っていった。

   何だったのかしら、アレ?

首を傾げながらもサクラは集合場所へと歩き始めた。








合計8人。
集合場所へ着くまでにサクラに声を掛けてきた男の数だ。
また今度とその言葉のみで乗り切ってきたが、そう何度も使える手ではない。
愛想良くって難しいなとサクラがこっそり溜息を吐いた時、またしても新たな人影が視界を塞いだ。

「春野さん!話が・・」
「お前、サクラちゃんに何の用だってばよ!」
「・・・話って?」
ナイトよろしくサクラの前に立ちふさがったナルトとサスケに、中忍と思われる男は一歩後退した。
それでも何とか言葉を発する。
「僕は春野さんに・・・」
「だーかーらー、何の用だってば。」
「サクラの方は話は無いそうだ。」
中忍の間でもこの二人は有名だ。
ランクこそ下忍だが戦闘能力は中忍のソレを上回る、と。
その二人に詰め寄られて分が悪いと感じたのか、男はそれ以上何も言わずそそくさと踵を返した。

ナルトとサスケの背中越しにその一部始終を見ていたサクラは首を捻る。
「何で急にこんなことになったんだろう?」
「・・・サクラちゃん、知らないの?サクラちゃんがカカシ先生を振ったって話。」
「へ?」
「オレ、昨日一楽で聞いたんだってば。・・・サスケも知らなかった?」
「・・・・」
サスケは任務以外で人とつるむ様な事はない。
当然そんな噂など全く知らなかった。
「ホントに先生と別れちゃったの?サクラちゃん・・・」
自分だってサクラが好きなくせに、でもその心配げな様子に偽りは無い。
「どーかな?」
「・・・サクラ?」
他人事のようなサクラの答えにサスケが眉を顰めた。
しかし揺れ動く瞳は泣いている様に見え、言葉を発することが出来なくなったナルトとサスケが顔を見合わせる。

   あの、クソ上忍!!!
   来たらボコボコにしてやるー!

出来るかどうかはともかく、二人の考えは一緒だった。








「オレ達って別れたんだ?」

お風呂上りに髪を乾かしている時、ソレは現れた。
二つある窓の、通りに面した方からサクラの待ち望んだ声がする。
でも。

   何で疑問系で聞いてくるのよ?
   ズルくない?

「さあ?」
やっとカカシの方からやってきたと思えばコレだ。
ズルイズルイ大人の駆け引き。
言葉遊び。

   そんなの私は全然楽しくない。

窓へと近寄り、サクラは月を背にした男の顔を見上げた。

結局、今日カカシは集合場所には現れなかった。
代わりに息を切らして走ってきたイルカ先生がカカシ個人の急な任務を告げてその場は解散となり、ナルトとサスケは個人修行を始めたのだが・・・
サクラだけはそのまま帰宅し、一日中部屋に閉じこもって過ごすことを選んだ。

「任務は無事終了したの?」
「もちろん。誰にそんなことを聞いてるのかなー?」
「はは。」
「誤魔化してないで。ねぇ、サクラ・・・オレ達って別れたの?」
心なしか低くなった声に、サクラは負けるものかと正面からカカシを見つめる。
「知らない。でも今日一日で12人の男の人に声を掛けられたわ。」
「ふーん。」
「電話は4件。それ以上は居留守使ったからわかんないケド。みんな私とデートしたいそうよ。してもイイ?」
「・・・」
「いいよね?先生だってしてるんだもん。」
挑戦的なサクラのセリフにカカシが目を細めた。
「そんなコト言って・・・もうシタんじゃないの?コレ、何?」
体温を感じさせない冷たい指先が伸びてきて、サクラのまだ湿った髪をすくい上げた。
細い首に一つ、紅いシルシ。
「虫じゃない?」
サクラの反応にカカシは押し黙った。
サクラはその場所にそういったシルシがあることを知っていて、自分に見せ付けているのだ。
隠す気はないらしい。
それがまたカカシの怒りを煽った。
「確かに・・・虫だな。しかも害虫。」
カカシは音もなく部屋の中へと侵入し、そのままサクラを壁へと縫い付ける。
「放してよ!」
「ヤダね。害虫の名前、教えろよ。始末してくるからさ。」
「・・・」
「教えろって!」
パジャマの胸倉を掴んだ拍子にボタンが一つ弾け飛ぶ。
現れた鎖骨の上にもシルシを見つけたカカシはすでに何も考えられなくなっていた。

「自分だってシテるくせに・・・」
「うるさい。」
睨みつけた後、サクラの身体を素早く反転させる。
壁と自分の身体で挟み込み、両手はまとめて頭の上で押さえ込んだ。
今までに無い強引さで、カカシはサクラの自由を奪っていく。
「やめて!!」
「クク。そんな大きな声出してると、両親が上がってくるんじゃないの?」
カカシは慌てて唇を噛み締めたサクラをあざ笑うようにパジャマのズボンへと手をかけた。
下着共々一気に摩り下ろす。
何も潤いの無い秘所へ指がねじ込まれた。
「イ・・ッタ・イッッ」
何度も何度も抜き差しする。
「イヤ!・・イッ・・・・あ!・・あんっ」
「風呂に入ったって・・・此処には残ってるかもねぇ?精液。」
中を掻き出す様に曲げられた指は的確にサクラのポイントを刺激する。
次第に溢れ出す愛液を絡めながら、カカシは指を2本に増やした。
「こんなに濡らしちゃって・・ヤラシイなぁ、サクラは。」
「あぁ・・ぁんっ・・・んっんっ」
「害虫くんとはイケなかったの?」
パジャマをたくし上げ、目の前に現れた白い背中。
背骨をなぞるようにゆっくりと焦らしながら舌を這わした。

   オレ以外の記憶なんて消してやる。
   跡形も無く全部!!!

サクラが抵抗する気が無くなったのを見計らって抑え込んでいた手を離し、背後から胸を揉みしだく。
「あっ・・はぁ・ん・・・あっあ!」
崩れ落ちそうになるサクラの腰をカカシが強引に抱え込んだ。
サクラの尻を割って、猛ったカカシ自身が押しやられる。
その物量に期待しているのか、サクラが溜息のような息を漏らした。
「ぁ・・」
「ほら。足、もっと開けって。入らないデショ?」
足を広げようにも、膝の辺りに溜まった下着がサクラの動きを邪魔する。
「む・・りっ!・・ひゃぁ・・・ぁあん!」
止まることなく責め続ける指に翻弄され、サクラの思考回路は停止寸前だった。
「あ、そ。別にいいよ、ツライのはサクラだけだから。」
さらりと酷いことを口にして、カカシは容赦なくズブリと自分自身を突き立てた。
「ひぃ・・イ・ヤ!・・・んっあ!!」
壁に頬を擦り付けるようにして必死に耐える。
しかし、かろうじて床に触れているつま先は細かく震えて頼りない。
そんなサクラに覆い被さって腰を振るカカシは、コレはオレのものだと主張しているようだった。

誰も触れることは許さないと、そう叫んでいた。








カカシ先生が任務で来れないことがわかり修行を始めたナルトとサスケ。
サクラは修行という気分でもなくて、二人に帰宅の旨を告げた。
背を向けて歩き出してすぐ、サスケが追いかけてきてサクラの隣に並ぶ。
「サクラ、送ってく。」
「え?大丈夫だよ。気分が悪いわけじゃないんだし。」
「イヤ・・・そうじゃなくて。」
サスケは遠巻きに見え隠れする連中を牽制するように視線を飛ばした。
サクラを狙っている男共だ。

   どいつもこいつも・・・!
   カカシのヤツと別れたと噂が立っただけでコレかよ?

少し強引な輩ならデートの申し込みだけでは済まない。
そういうことを全く考えていないサクラの警戒心の無さをサスケは少しだけ呪った。

「チッ。面倒だな。」
少しずつ、数が増えてくる気配にサスケが足を止めた。
相変わらずサクラは現在の状況に気付いていない。
ニブイのもここまで来ると立派なものだ。
賞賛に値する。

「サクラ・・いい考えがあるんだが、ノルか?」
「?」
「上手くいけばカカシより優位に立てるぞ。・・・別れるつもりはないんだろ?」

   しかも今、周りにいる連中を一掃できるし。

サスケの言葉にサクラの大きな翡翠の瞳が更に大きくなった。
「・・わかる?」
「ああ。」

   残念なことにお前のことは何だって解るんだよ。
   ・・・いつも見てるからな。

薄紅の後頭部に手を沿え、そのまま自分の胸へと引き寄せる。
空いた手で耳にかかる髪を掻きあげて、白く華奢な首筋に素早く唇を押し付けた。
少しばかり刺すような痛みを与えてから離れる。
「サ、サスケくん?!」
今のがどういう行為なのか、サクラは知っていた。

   サスケくん!!
   キスマークのどこがいい考えなのぉ〜?

人通りが無いとはいえ、ここは道の往来だ。
予想外の行動に、サクラは少し上にあるサスケの顔を仰ぎ見る。
そのサスケは動揺しまくっているサクラとは正反対に、冷静に周りの気配を辿っていた。
予想通り一瞬にして散会した邪気に失笑する。

   ふん。
   オレ相手でも手を出してこれねーような奴らかよ。

いつもはきっちり閉めているサクラの忍服のファスナー。
それが今日はわずかながら開いていて、サスケは引き寄せられるようにソコにも唇を落とした。
一度目より優しくそっと吸い上げる。
「ちょ・・ちょっと待って!」
頭の上で再び動揺した声が発せられた。

   これぐらいのイイオモイ、したってバチは当たらねーよな。

サクラの身体に二つ目の紅いシルシを残してようやくサスケが顔を上げた。

「これでアイツと対等にやれるんじゃねぇ?後はお前次第だ。」

サクラはやっとサスケの言わんとしている事がわかった。
要するにサクラはたった今、『浮気』をしたわけだ。
先生と同じ『浮気』。
そのシルシを使って先生をとっちめろと、サスケは言っている。
「・・・上手くいかなかったら?」
不安げに呟いたサクラに、冗談半分、本音半分でサスケが断言した。

「オレが付き合ってやる。」








カカシが一心不乱に腰を振っている時、すでにサクラの意識はなかった。
熱いその中に全てを吐き出し果てるまで、人形のように揺さぶり続けた。

独占欲。
そんなもの自分にはないハズだった。
もちろん、他人からの束縛も煩わしいと思ってた。

   ・・・自分がこんな独占欲の塊のような人間だったなんて・・・

今目の前にサクラにシルシをつけたヤツが現れたなら、自分は何も考えることなく殺すだろう。
最も残虐なやり方で。
例えサクラにどんなに命乞いをされても、絶対止めたりしないと断言できる。
カカシはサクラの振り乱れた薄紅の髪を手櫛で整え、ベッドへ寝かせた。
自分以外の男が付けたシルシを指で覆い隠す。
「・・・もうこんなことしないでくれ。」
「先生がしないならね。」
誰に聞かせるともなく呟いたカカシに返事が返ってきた。
意識を取り戻したサクラがゆっくりとその瞳を開ける。
「サ・・クラ・・・」
「先生が女の人と遊ぶなら、私も他の人とデートをするわ。」
色違いの瞳を真っすぐに見つめて、サクラははっきりと宣言した。
「先生が誰かと夜を過ごすなら、私もそうする。」

誤魔化しは一切無しの対等な関係。
サクラがカカシに求めるもの。
それが出来ないなら・・・

「・・・別れる?」
「イヤだ!」
子供のような即答にサクラは笑った。
「他の男となんて・・・許さない!」
逃がさないようにと、カカシはサクラをきつく抱きしめる。

「だからね、先生がしないなら私ももうしないわよ。」










   私の勝ちね!

   いい経験だったわ。
   私が意外にモテるってことも分かったし。
   ・・・これからは、覚悟してよ?

   先生vvv















悪戯子猫は主を従え、すまして歩く。

愛されてることを知っているから。















2003.08.18
まゆ