残像 1 ○月×日 ん、と。日記書くのも久しぶり。 今日、やっと波の国から帰ってきたの。 いろんなことがありすぎて、何から書いていいか迷う。 『忍』というものの現実を見たというか…すごく考えさせられちゃった。 敵って何? 死ぬってどういうこと? 任務第一!どんな任務も命がけ、ってアカデミーでは教わったけれど… そんなの…そんなのよくわかんないよ。 もし、波の国での任務みたいなことが日常になったら、私はどうなるんだろう? …もう少し、先だといいな。 たとえそれが現実逃避だとしても、心からそう思う。 そういえば…初めて見ちゃったわ… カカシ先生の素顔!! なんか思ってたより若くてびっくりー。 すっととおった鼻筋とか涼しげな口元とか意外に格好イイ…って、あれ? えっと…だからそういうことを言いたいんじゃなくてさぁー。 モテそうな感じ? …何を書いてるんだろ、私。 だって…先生がオレの仲間は殺させやしない、なんて言うから! 優しい笑顔でそんなこと言うから… もう。…なんなのよ、この気持ち。 「…行かないのか?」 アカデミーの上忍控え室。 椅子に深く座り込んだまま動こうとしないカカシにアスマが声をかけた。 「もうそろそろだろう?」 「何が?」 「何がって、お前…」 アスマは予想外の返事に言葉を失う。 今日の正午きっかりにそれは行われるはずだ…カカシが知らないはずはない。 「行ってやれよ。じゃないとお前、後悔するぞ」 「行かない」 「カカシ…」 またしても即答にさすがのアスマも苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。 カカシは一点を見つめ俯いたまま、顔をこちらに向けようともしない。 「あそこにサクラはいない」 「…」 「サクラは暗い所が嫌いなんだ。あんなトコに隠れるわけないだろ?」 何と答えていいか迷うアスマに淡々とカカシは語りかける。 「喧嘩したんだ。だから拗ねて隠れてるんだよ、サクラのヤツ」 空気が重く圧し掛かる静寂な部屋の中。 動くものはなく、ただ息をするのも躊躇われる。 不意に、全開に開け放たれている窓から緩やかな風と共に正午ちょうどのサイレンが遠く聞こえてきた。 …時間だ。 「…行ってくる」 アスマは再びカカシを誘おうとはせず、手を掛けたままだったドアノブをゆっくりと回してひとり部屋を後にした。 「何処に居るんだよ…?」 そろそろ機嫌を直してくれてもいいデショ? …誓ってもう遅刻なんてしないから。 カカシはゆっくりと瞼を下ろす。 瞳の裏でサクラが微笑み…何かを呟いた。 2003.04.22 まゆ 2008.11.16 改訂 まゆ |
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