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今日より明日。

明日より、明後日。

俺の中の野ブタはだんだん大きくなってくの。

キミしか見えない俺は……この先どうなっちゃうんだろうね…?




最近では常に視界に入っていないと落ち着かなくなった信子を探して、彰は教室を見渡した。
授業中だというのに休み時間さながらの賑やかさだ。
美術の時間はいつもこう。
しかし乱れる机はそれでも一応、教室の中心に向けられており…そこにはおどけた調子でポーズをとる修二の姿があった。
皆のリクエストに応じながらちょこまかとポーズを変えるモデルに美術教師が近寄り、強引に腕と足の角度を直す。
少し高い、段の上。
そこに置かれた椅子に座る修二は…全く面白みの無い、ただの『考える人』になってしまった。
クラス中から笑いと冷やかしが飛び交う中、それを見つめる真っ直ぐな瞳。

野ブタ、見ーっけ!

彰は椅子に座ったままガタゴトと派手な音を立てて信子の隣に移動した。
誰も俺のやることなど気に留めない。
所詮、このクラスにおける自分の存在などその程度なのだ。
ただ野ブタだけが驚いたような顔でこっちを見た。

「ど…どうしたの?草野くん」
「なんでもないだっちゃ!ただ野ブタの隣に来たかっただけなのよーん」
「そ、う」

少しだけ恥ずかしそうに瞳を伏せた信子は、すぐにまた修二へ視線を戻した。
それと同時にデッサン用の、軟らかい芯の鉛筆がゆっくり動き始める。
彰が覗き込むと濃い影を残す紙の上にはおぼろげながらも人の形が浮かび始めていた。

「修二に色をつけるとしたら何色?」

野ブタが修二を見つめていることが気に入らない。
すごく気に入らない。
胃だってムカムカするし。
彰は信子の視線を反らせたい一心で適当なことを口走った。

「う…ん。み、緑かな?」
「そのココロは?!」
「木、だから」

そう答えながら信子が横にいる彰を見上げると、彼は首を傾けて言葉の続きを促していた。
黒目がちの大きな瞳とぶつかって、慌てて目を伏せる。
言葉足らずの私を急かす訳でもなく…ごく自然に待ってくれている、そのことが嬉しくて。
信子は他人にはわかりにくい笑顔を浮かべ、頭の中で言葉を組み立てつつ話し始めた。

「…き、桐谷くんは、お…大きな木みたいじゃない?皆が自然と集まる…い、居心地の良い場所だと思う」
「うっか、うっか」

多分、『そうか』と言っているだろう彼の言葉に信子はこくんと頷く。
それを見て彰は自分のスケッチブックに木の絵を描き始めた。
大きく広がった枝にはヒヨコのような可愛い鳥が何羽もとまっている。
その一羽一羽にクラスメートの名前を書き込んでから、彰は顔を上げた。

「野ブタ的にはこんなカンジ?」

無言で首を大きく縦に振る信子を彰は嬉しそうに見詰める。
鉛筆を器用に指でくるくる回しながら少し考えた後、彰は再びスケッチブックへと視線を落とした。

「俺的にはねぇ…野ブタはお花畑なぬー」

動く鉛筆のあとには色々な形の花が描かれていく。
チューリップもあればひまわりもある。
彰は大きな木の根元まで季節感全く無しの花で埋め尽くし、信子に差し出した。

「野ブタの色は決められないの。黄色だったりピンクだったり青だったりするのよーん。だからお花畑だっちゃ!…駄目?」
「だ、駄目じゃない!……ありがとう」

小さな小さなお礼の言葉に気を良くした彰が信子の頭を優しく撫でる。
そして、彰はうっすらと頬を染める信子の耳元に口を寄せ、囁きかけた。

「俺と一緒の時、野ブタがいつもピンク色だったら嬉しい…」









おまけ →




やっぱり彰はいい…らぶvv

2006.02.13
まゆ