あの子が欲しい




「ねぇ、アキラくん。前から思ってたんだけど…」
「なに?」
「どうしていつも目を閉じてるの?」

そんなこと聞くなよ、面倒臭い。
大体…知らない方が良いこともあるんじゃね?

「…余裕あんな。もっと集中しろって」

亮は両目を開けて組み敷いた女を見た。
ばっさばさの付け睫毛で強調された瞳、腫れぼったい唇。
仲間内ではすげぇ可愛いと評判の彼女だが亮にとってはどうでもいいことだった。
好みの顔ではないし、性格だってもう少し控えめの方がいい。
じゃあなんで美香と付き合ってるのかと問われると答えはたったひとつだけ。
あいつと声が似ている。ただそれだけだ。

「ホラ…ちゃんと啼けよ。オレはお前の感じてる声が聞きてえの」

それしか価値がないのだから、存分に楽しませてくれないと困る。
美香の顔の脇に肘を付いて…亮は彼女の唇に耳を寄せる。
腰の動きを速めれば美香はすぐに嬌声をあげ始めた。

「うっ…くぅ……あぁんっ」

耳をくすぐる吐息に混じった甘い声に、じんと身体が痺れる。
即座に硬度を増した下半身を打ち付けながら亮は喉の奥でくつくつと笑った。
いつもながら男ってヤツは本当に呆れるぐらい単純に出来ているんだなと自覚する瞬間だ。
好きでもなんでもない女でもそれなりに気持ち良くなれるなんて最低で最高だろ?

「もう…ゃ……だめ、アキラくん!」

名前を呼ばれると同時に吐き出す欲望の塊は飛散することなく薄いゴムの内側にとどまっている。
当たり前かもしれないが避妊を怠ったことは一度も無い。
…美香との子供なんて考えただけでぞっとする。
亮はずるりと引きだしたイチモツから馴れた手つきでゴムを剥ぎ取ってごみ箱へ落とした。

どうしていつも目を閉じてるのかって?
目を閉じて妄想してんの。
お前の顔をあいつに置き換えて犯してんの。
だってお前…あいつじゃねえんだもん。
オレが本当に欲しいのはあの子なんだよ。
あの子だけなんだ…





どうしても欲しいあの子は親友の彼女だったり。



20110919
まゆ