おかえり



中忍になるための『第三の試験』
その予選が終わり、サスケを病院へ運んだであろうカカシが会場へと戻ってきた。

気が付けばいつの間にか入れ違いにナルトが居なくなっている。
アイツのことだ。
早速、修行にでも行ったのだろう。
怪我もわりと軽症だったので心配はないと思う。
サスケの容態は気になるが・・・そんなことより、先生だ。
何よりも・・・やっと二人きりになれたという気持ちの方が大きく膨れ上がる。

逢いたくてしょうがなかったカカシが、今、目の前に立っているのだから。



「髪・・・。」

急いで駆け寄ろうとしたサクラはカカシのその一言で身を強張らせた。
何も言われたことはないが・・・カカシは確かに自分の髪を気に入っていたように思う。
二人で居る時、よく指に絡めてはその感触を楽しんでいたし。
それに、もうひとつ。
今更ながらサクラはこの髪が果たす重大な役割を思い出した。

   どうしよう・・・
   怒られちゃう。

急に大きく脈打ち始めた心臓の音が五感の全てを支配する。
その場から一歩も動けなくなったサクラに・・・逆に、カカシがゆっくりと近づいた。

いのが整えてくれたとはいえ、所詮その場凌ぎ。
不揃いな襟足の髪を摘み上げるカカシの顔を伺いながら・・・サクラは素直に謝るしかなかった。

「・・・ごめんなさい。」
「まぁ、いいケドさ。コレどうしたの?」
「え・・あ、うん。ちょっと・・・・成り行きで、切っちゃった・・かな?」
「自分で?」
「・・・うん。」

   心配してくれたの?
   それとも・・・自分の後先考えない行動に呆れた?

後者のほうが断然確率が高そうに思えた。
サクラは慌てて言い繕う。

「でも・・でもね!お陰でみんな無事乗り切れたっていうか・・・」
「ふぅん?いいよ、別に。髪だからすぐ伸びるだろ。それに・・・髪で隠せなくて困るのはサクラだからね。オレじゃない。」

大して気にする風もなく、薄く笑うカカシはいつにも増して意地悪く見えた。
『困ること』をするのは一体誰なのか。
他人事のように言い切ったカカシに憤りを感じながらも、その冷淡な笑みはサクラの身体を熱くする。

「・・お仕置き、するの?」

恐怖に?
期待に?

サクラの可愛い声が震える。


「当然デショ。困る困らないは別にして・・・オレに断りもなく髪を切ったのはサクラの失態なんだから。」
















行こう、とカカシに手を捕られ歩き始めたのも束の間、サクラは不意に手近な部屋へと押し込まれた。
まだ試験会場である建物の中だ。
下へ続く階段すら降りていない。
訳がわからず慌てたサクラがカカシを見上げた。

「先生、ココ・・・」

壁を背にして置かれた二人掛けのソファー。
その真上、少し高い位置には窓が1つ。
小さなガラステーブルを占めるのは飲みかけのコーヒーカップとソーサー。

明らかに先ほどまで誰かが使用していた痕跡がある。
恐らく中忍試験に関与する上忍達の控え室だったのではないだろうか?

「先生?」

今は誰も居ない室内を見渡して、サクラは再び隣に並ぶカカシを見上げた。
カカシはサクラの呼びかけには答えず、右手をがっちりとサクラの腰に回したまま後ろ手で鍵を掛ける。

カチャリ。

少し高い金属音が耳障りに響いた。

まさか、と思う。
いくらなんでもこんなところでは・・・。
しかしそんなサクラの不安を決定付ける一言を、カカシが告げた。

「しよっか。」

何を?なんてそんなコト、聞けるはずもない。
これがどういう状況かぐらいサクラにも十分わかっている。が、ソレとコレとは別の話だ。
いくら鍵を掛けたとはいえ、いつ誰が来るとも知れないこの部屋でセックスする気にはなれない。
きっと・・・声だって漏れてしまう。

「先生ん家、行こう?・・・此処じゃ、ヤダ。」

久しぶりに先生に抱かれるのだから周りなんて気にしないで思い切り乱れたいと思うのは私の我侭だろうか?
それに、土や埃で汚れた身体をカカシの瞳に晒すのは避けたい。
傷の手当てのために多少洗い流しはしたものの、せめてシャワーぐらいは浴びさせて欲しかった。

「駄目。」

懇願するように告げたサクラの意見はあっけなく却下された。

「でも・・・。」
「我慢できないヨ。ずっと待ってたんだから。」

耳元で囁くようにそう言われるとサクラも言葉に詰まる。
逢えないでいることに耐えていたのは自分だって同じなのだから。
黙ったことを了承の意に受け取ったのか・・・カカシはサクラの身体に指を這わせ始めた。

「ダメ!先生・・んっ・・ぁ・」

首に吸い付かれて、吐息が漏れる。
カカシは全身の力が抜けて膝を折ったサクラを軽々と抱き上げソファへ運んだ。
その上へゆっくり座わらせると自分はサクラの正面で床に膝を着く。
そして、徐にスパッツに手を掛けると一気に下着ごと抜き取った。

「せんせぇ・・・」

忍服の裾が捲れ上がり、現れたのは以前より多少日焼けした素足。
そのあちらこちらにある切り傷や打撲にカカシは眉を顰めたが、それも一瞬のこと。
足の指先から上へ向かってひとつずつ丹念に傷を舐め始めた。
その姿は自分に従順な僕のようで、いつもとは違う興奮をサクラにもたらす。

「消毒消毒。」

尖った舌先が傷を追うたび、サクラは震えた。
背筋にぴりぴりと電気が走る。
理性とは別の処で・・・これから行われるであろう行為に期待を感じて胸が踊った。

「ぁ・・・はぁ・んッ」

サクラの身体の中心から早くもトロリと何かが溶け出した。
反射的に腰が浮き、透明で艶やかな液が滴り落ちる。
それは安物のソフトレザーに弾かれ、小さな水溜りを作った。
内股の、キワドイ位置の傷を舐めながら間近で見ていたカカシがくすくすと笑う。

「サクラのえっち。ナニ興奮してるの?」
「や!」
「あ、そう?嫌?」

カカシの頭がすっと離れていく気配にサクラが慌てた。
まだ肝心なところは一度も触れられていない。
外気に晒されたまま、与えられるであろう刺激を待ちわびてヒクヒクと収縮しているのが自分でもわかる。
全てはこれからなのだ。
カカシの肩に添えられていたサクラの両手がカカシの頬へと伸び、両者は視線を絡ませた。
縋るような翡翠の瞳に勝ち誇ったのは青銀の髪の男。

「素直じゃないなぁ、サクラは。ま、どうせ止めないけどね。お仕置きして欲しいんだろ?」

カカシは喉の奥で低く笑いながらサクラの手を払いのけた。

「あ?利害が一致すると『お仕置き』とは言えないか。ねぇ、マゾのサクラちゃん?」
「・・・。」

やや沈黙があってからサクラが口を開く。

「いつもみたいに・・シテ。」

もう目の前の男以外のことは何も考えられない。
誰が来ようとも、誰に声を聞かれようとも・・・サクラは自分の中の欲望に忠実だった。
薄く開いた唇からちらりと赤い舌が覗き、艶やかにカカシを誘う。

「・・・いつも以上に酷く、デショ?」




















私は別に最初から『痛い』のが好きだったわけじゃない。
カカシ先生に、そういう身体にされただけ。



先生が好きなのは後ろからスルこと。
背中から覆い被さり、獣のように攻め立てる。
そして、うなじ。

・・・どうやら先生は首フェチらしかった。


征服欲を掻き立てるんだって。
私にはよくわからないけど、凄く凄く興奮するんだって。

噛み付く、その行為が。










「サクラァ・・」

今まで髪で隠されていたはずのサクラの細い首が、無防備にカカシの目の前に晒されている。
中忍試験が始まる前夜にも行為に及んだというのに、その痕はすでに無い。
カカシは面白くなさそう肩をすくめた。

ゆっくりと舐め上げただけで、サクラはきゅうきゅうとカカシ自身を攻め上げる。
久しぶりのせいか・・・いつもよりキツイ。
カカシは喉の奥で低く笑うと、一呼吸置いてから・・・いつものように噛み付いた。

「ひィ・・・・っあ!」

深々と歯が喰い込む。
カカシの口の中に錆びた鉄の味がじわりと広がった。

押さえ込み、急所を攻め立てる行為は雄の本能だ。
ただカカシの場合それが如実に現れるだけ。
全てを受け入れる、受身のサクラの性格も災いし・・・次第にエスカレートしていったカカシとのセックスは、もはや尋常ではなかった。

唾液と血液が交じり合う。
それを吸血鬼のように啜り上げて、カカシは一度口を離した。
口の端についた血を拭いながら・・・サクラの弓なりに反った背中をひと撫でして耳元に囁く。

「ナルトが呼んでるヨ、サクラ・・・」

カカシの声にはっと顔を上げれば、窓の向こう、確かにナルトの姿を見つけることが出来た。
此処は二階。
直線にしてざっと50m。
意外に近い距離だ。
ナルトの隣には見たことのある背の高い上忍らしい人物が一緒にいるが、それが誰だったかなんて考える余裕は無い。
すでに自分はソファーの上で反転させられ、窓枠に指を引っ掛けるようにして自らの身体を支えている状態なのだ。
ナルトの視界に入っていないことを祈りながら、サクラは急いで身を縮めた。

「顔出してやれば?」

カカシの言葉に身動ぎする。
カカシとは違って、自分はとうに身を隠すものなど纏っていない。
サクラは弱々しく首を横に振ったが・・・カカシは言い出したからには必ずそうさせるだろう。

「ホラ。ね?サクラ・・・」

優しくお願いされてもやはり瞳は笑っていない。
ただ悪戯にきらきらと輝いているだけだ。
意を決したサクラが窓からちょこんと頭だけを出す。

「あれ?サクラちゃんも居たんだ?」

20mの距離まで近づいてきたナルトに、サクラが曖昧に頷く。

「二人で何してるんだってばよ?」
「手当て。」

何食わぬ顔でカカシが返事を返す。
同時に、いきなり手を上に引っ張られ、サクラは慌てた。
二の腕に巻かれていた包帯がいつの間にか解けかけており、風になびく。

「コレコレ。包帯を換えておこうと思ってな。」
「サクラちゃん、大丈夫なの?」
「心配ない。念のため化膿止めの注射も打ってるから。」

眼下のナルトに対して引きつった笑みを浮かべるサクラを、その背後からぴたりと身を寄せているカカシが掻き回す。
腰を浮かして逃げようとすれば逆に引き寄せられ深々と突きたてられた。
サクラは奥歯をかみ締めて声を押し殺す。

「そっか。オレはこれからすぐ修行にいく!」
「おぅ。頑張れよ。」
「当たり前だってばよ。じゃーね!カカシ先生、サクラちゃん!!」

サヨナラの、手を振る余裕があるはずも無い。
身を打ち付けられる振動で身体が上下に揺さぶられる中、なるべく頭だけは動かさないようにサクラは必死に窓枠にしがみ付いていた。
ナルトが自分達に背を向けて、待たせていた人の下へと駆けていく。
自分達が行おこなっている行為がバレなかったことに安堵し、ほっと息をついたサクラの身体をさらに激しくカカシが弄った。

「余裕だねぇ。」
「そ、・・・そん・な・・コト・・・ない。」

水音は鳴り止まなず、むしろ大きくなってきている。
透明な甘い体液はギリギリの処で抜き差しされる度に溢れ出て、サクラの太腿を伝った。
カカシはそれを指に絡めると、最も敏感な蕾へと擦り付ける。
仰け反ったサクラを押さえ込み、再びカカシが血の滲む首に噛み付いた。

「あっ・・あぁ・んッ!」

もう限界だった。
ナルトの後姿が完全に遠ざかったことを虚ろな瞳で確認した途端、サクラはあられもない声と共にソファーへと崩れ落ちた。
抜けてしまったカカシのモノが明るい部屋の中でグロテスクにそそり立っている。

   アレが、欲しい。

「せ・・んせ・ぇ・・・お・・ね・がい・・」

カカシはサクラの視線の先が自分の下半身にあることを確認すると焦らす様にわざとゆっくり尋ねた。

「もうイキたいの?」
「お・・ね・がい・・・シメて・・よぅ。」
「はいはい。好きだねぇ、サクラも。」

仰向けのサクラにのしかかり、カカシはその左足を持ち上げると自らの肩へと引っ掛けた。
大きく開かれた花弁は押し入ってくるカカシを貪欲に飲み込んでいく。

「あっ・・あっッ・・・・」

その圧迫感に、サクラが苦しげに喘ぐ。
強引に根元まで埋めてから・・・カカシは満足げに一息を吐いた。
そして、おもむろに片手を白い首に伸ばす。
カカシは腰を振り始めると同時に、親指で押すようにしてサクラの頚動脈を圧迫し始めた。



・・・もちろん、サクラの為に。
















初めは息苦しいだけ。

でもすぐに意識が遠のいてくるのがわかる。
何て言えばいいのだろうか?
『落ちる』感覚は・・・寝不足の時に布団に入る感覚と似ていた。

わふわと漂う中、競り上がってくる快感がサクラをこのまま死んでもいいと思わせる。
視界が薄いグレイから黒へと変化する時、それは最高潮に達した。



   先生はシメるのがとっても上手!










びくびくと身体を痙攣させるサクラから、カカシは自分自身を引き出す。
途端に注ぎ込まれたばかりの白濁の液体がサクラの身体から溢れ出た。
その量にカカシは笑みを零す。

   ほんの一週間。
   一週間、逢わないだけでコレだ。

他の女で処理しても良かったが・・・結局のところ、自分の性的欲求を満足させられるのはサクラしかいない。
カカシはそのことを十分に理解していた。
もちろん、サクラの欲求に答えてやれるのも自分だけだという自負もある。



カカシの指の隙間をさらさらと流れる短い髪。
その下、白いうなじに残るは人間の大きな歯形。セックスの名残り。
傷というには不可解なそれを隠す術はもうない。

   中忍試験で負った怪我という言い訳は一体いつまで使えるかな?

カカシはポーチの中から包帯を取り出しながら苦笑した。
当然、ヤラなければいいなんて考えは浮かんでくるはずも無く・・・上手い言い訳を探して考えを巡らせる。

「そういえば・・・まだちゃんとキスをしてなかったね。」

カカシは今更ながらに呟くと、先ほどまで吐息を吐いていた薄紅色の唇に触れるだけのキスを落とす。
巻き終えた包帯の上から・・・まだ意識を失ったままのサクラのうなじをゆっくりと撫でた。


「お帰り、サクラ。無事で良かった・・・・」




















お題・・・うなじ
カカサクエロリ友の会提出用


2004.09.05
まゆ