天使の悪酔い 後 「どうする?」 「どうすんだよ?」 途方に暮れる、という表情とはまた少し違った顔で二人が呟く。 その理由は・・・しっかりと絡みとられた腕に、最近特にふっくらとしてきた胸の感触を感じるためで。 サクラは両脇にナルトとサスケを従えて、至極ご機嫌だった。 「エヘヘ〜。何だかねー超気分イイのぉ。」 舌足らずな喋り方も、薄く色づいた頬も、一つに纏め上げられた髪のおかげで晒されている細い首すじも・・・すべてが二人を捕らえて放さない。 やっぱり好きなものは好きなんだよなぁ・・・ サクラに極上の笑顔で微笑まれ、二人は溜息と共に肩を落とす。 相手がヤツじゃなければ・・・ そう。 あの男じゃなければ、負ける気はしないのに。 ナルトもサスケも・・・カカシにだけは勝てないと思っている。 なにも力に屈してのことではない。 ただ、カカシの深いところ・・・精神的な部分がサクラを求め、それに答えたサクラ・・・この二人をを目の当たりにしては割り込む余地が見当たらないのだ。 ナルトとサスケはお互いに目が合うと気まずそうにまた大きな溜息を吐いた。 酔った状態のサクラをそのまま家へ送るわけにはいかず、その場に座り込んでいた3人のもとへリビングを占拠していた集団が行儀良く列を作った。 「な、なんなんだよ?!」 集団の列の先頭・・・リーが代表して答える。 「なんなんだはないでしょう!ナルトくんとサスケくんこそ何やってるんですか?!サクラさんの隣で!!」 「何って・・・」 「サクラさんにプレゼントを渡すのならちゃんと順番を守ってくださいよ。ジャンケンには参加したんですか?」 「へ?」 「サクラさんと同じ班だからといって抜け駆けは止めてください!!」 「・・・・」 いやに盛り上がりを見せていたリビングの集団はどうもサクラにプレゼントを渡す順番を決めていたらしい。 しかも、ジャンケンで。 ナルトとサスケは頭を抱えた。 こいつ等・・・みんなマジでサクラ狙いかよ?! 冗談じゃねー!! 一番は無理でも二番の座を譲る気はないッッ!! その場を包む空気がピリピリとしはじめた時、間の抜けた甘ったるい声が部屋に響いた。 「んーとねぇ、サクラみんなだーいすきだよ?だから・・・けんか、しないで。」 そう言った後、絡めていた左右の腕を引き寄せると近づいたナルトとサスケの頬にちゅっと唇を押し付ける。 あまりにも一瞬の出来事の・・・キスと呼ぶには稚拙なそれは十分に周りを刺激し、緊張がピークに達した部屋の中は殺気さえも漂い始めた。 戦闘態勢になりつつあるその場に玄関の方角からひときは冷たい空気が流れ込んできて・・・ 瞬間、ナルトとサスケに掴みかかろうとしていた数人が不意にバタバタと倒れ込む。 その中心には・・・床に重なるモノには目もくれず、唯一覗かせている右目を氷のように凍らせたカカシが立っていた。 さっきまでの緊張とは比べられないほどの威圧感が辺りを包み込む。 誰一人として動ける者はいなかった。 カカシは静かに3人に近づき、ナルトとサスケに絡められていたサクラの腕を強引に剥ぎ取ると、そのまま両手を引いて抱き上げる。 終始無言のまま、他を寄せ付けないオーラを撒き散らして玄関へと向かうカカシが不意に振り向き・・・部屋を見渡して一言だけ告げた。 「全員の顔、覚えたから。」 カカシは自宅へ着くと鍵がかかったままの玄関の戸を足で蹴り開けた。 土足で上がりこみ、真っすぐ寝室へと向かう。 そこの扉もまた蹴り開けて・・・大きめのベッドの上にサクラをほうり出した。 「なにやってんだよ、オマエ。」 カカシの冷たい声にサクラが上半身を起こすと、ゆっくり視線を合わせる。 「あぁ?カカシせんせーだぁ・・・」 今、初めて気付いたかのようなその言葉にカカシの瞳がさらに凍りつく。 「何、飲んだの?そんなに酔っちゃって。」 問いには答えず、サクラは逆に責めるような言葉を返してきた。 「しってる?サクラねー、たんじょーびなのぉ。一緒にいたかったのに・・・それなのにさぁ・・・せんせぇは、わたしのよりだぁいじな用があるのよね?ー・・・も、終わったぁ?」 「・・・」 「わたしのことなんかぁー、どうでもいいのよねー・・・」 「・・・」 「だからねぇ・・・きらぁい。ナルトとサスケくんはすきー。だってやさしいもん。プレゼントだって貰っちゃったんだからー。」 「へぇ?・・・まぁそうだな。オレは優しくなんかないし?」 サクラから紡がれる言葉は・・・『沈着冷静のエリート忍者』、そう呼ばれて久しいカカシの心の奥底に『嫉妬』という名の火を付ける。 どうしてオマエはこうもオレの気持ちを乱すのが上手いんだろうね? キライ・・・か。 上等だよ、サクラ。 遠慮なく『嫌われるようなコト』、させてもらう・・・ 手加減は一切抜きだ! 後頭部に回ったカカシの指が白いリボンを掴みゆっくりと引くと・・・流れるように髪が解けた。 「やだ!かえしてよぅ・・・それ、サスケくんからのプレゼント・・・」 「じゃ、これは?・・・ナルトのヤツか?」 細い鎖に人差し指を絡めると、力任せに引きちぎる。 「痛っ!」 首筋を押さえて痛がるサクラの目の前にカカシが意地悪くリボンとネックレス、その両方を掲げて見せた。 取り戻そうと伸びてきたサクラの両手首を掴み、素早くリボンを巻きつけて拘束する。 ネックレスの方は部屋の隅へと投げつけらけた。 決して簡単には解けない結び方で結ばれたリボンの拘束から逃れようと・・・両手を左右に引っぱるサクラにカカシの低い声が落ちる。 「いいの?そんなに強く引っ張っちゃって。千切れちゃうよ?大事な大事なプレゼントなんだろ?」 反射的にもがくのをやめたサクラの上にカカシがゆっくりと圧し掛かる。 一つにされた手をさらに頭の上で押さえ込まれて、サクラはカタカタと震え出した。 カカシとは何度も身体を合わせていたが、こんな風に力でねじ塞がれたことは・・一度も、ない。 「や・・・いや!」 「はいはい。ヤだねぇ。」 そう言いながらもカカシの唇はサクラの白い首へと落とされた。 ネックレスを引きちぎった時に出来た赤い糸のような痕に沿って舌を這わし、キツク吸い上げる。 サクラの大きなガラス玉のような瞳から雫が零れ落ちた。 「や・・めて・・・」 「駄目。」 服の上から膨らみかけた胸を包み込むように揉みしだくとすぐに中心が硬く尖る。 「えっちな身体。」 カカシの言葉にサクラは顔を背けた。 「服の上からじゃつまんないね。」 一気にたくし上げられたTシャツとキャミソールから覗く二つの赤い果実、その片方を口に含み、舌で転がす。 「あんッ」 身体から一気に力の抜けた事を感じ、カカシはサクラの頭の上で押さえ込んでいた手を放すと胸へと滑らせた。 指で軽く摘むとびくりと身体を震わせ、背を弓なりに反らす。 「や・・はぁんっ・」 思わず洩れる吐息にニヤリと笑う。 「きもちイイんだ?」 カカシの声にアルコールで薄く色づいていたサクラの頬がさらに赤くなる。 「そんな・・こと・ないもん。せんせぇとなんて・・・えっちしない!」 「ふぅん?オレはぜんぜん気にしないよ。例えば、そう・・・強姦でもね?」 カカシのものとも思えないセリフにサクラが弾かれたように視線を戻した。 大きな瞳をさらに丸くして自分を見つめる少女にカカシは追い討ちをかけるような言葉を吐く。 「・・・だって嫌いなんでショ、オレのこと。」 そう言うとカカシはサクラをごろんとひっくり返した。 素早く下着を剥ぎ取ると、うつ伏せになったサクラの腹とベッドの間に腕を差し込み、強引に腰を引き上げる。 「いい眺め。」 「くぅっ。・・・」 突然、サクラの中へカカシは指を1本突き立てた。 「いたッッ!!」 僅かに潤っただけの狭い入り口に続けて2本目も刺し込まれる。 「ヤぁ!」 腰を引こうにもしっかりとカカシの腕に抱え込まれており、思うように逃げられない。 しかし、サクラの中を圧迫していたモノは意外にもすぐに消え去った。 不意に消えた痛みにほっと息をついたのも束の間、カチャカチャというベルトを外す音が聞こえ始め、思わず振り向く。 「なッ!!」 サクラの目の端に映ったのは・・・大きく反り勃ったカカシ自身が今まさに自分へとあてがわれる瞬間だった。 続いて襲ってきた鈍痛に言葉を失う。 いつもならばカカシの指でよく慣らした上での挿入なのだが、今はただ・・・捩じ込まれた。 幼い身体の入り口は狭く、メリメリと裂ける音が聞こえてくるようで、サクラはシーツに顔を擦り付け歯を食いしばる。 「うっ・・くッッ・・・」 それでも洩れる苦しげな吐息にカカシは喉の奥で笑った。 「サクラのせいだよ。サクラがいけないんだ・・・オレのことだけ待ってれば良かったのに!!」 なるべく急いで帰るからって言ったでショ? あんな・・・ あんな下心ミエミエの連中と一緒にいるなんて! しかもナルトとサスケにキスしただろ、サクラ・・・ いくら酔ってるからと言っても限度がある。 っていうか、なんで酔ってんの? 「・・ねが・・・い・・うごかな・・いで・・・」 「やだね。」 カカシのモノを強引に受け入れさせられたサクラが息も切れ切れに懇願したにもかかわらず、あっさりと否の返事を返された。 突き上げる衝動でサクラが前後にガクガクと揺れる。 白い太腿に伝うのは愛液ではなく、血。 「やッ・・イヤー!!」 ただの苦痛しか感じないその行為にひときは大きな声をあげると、サクラは意識を手放した。 しかしカカシは・・・力が抜け、人形のようになったサクラの身体を抱え込んでは何度も突き、自分勝手に快楽を求める。 くちゅくちゅと響く水音と身体を打ち付ける音。 そして、自らの荒い息遣い。 サクラサクラサクラサクラ・・・ サクラの細い腰を掴んでいた手が食い込むほどに・・・力が入る。 それと同時に一滴残らずすべてを注ぎ込み、カカシもサクラに覆い被さるようにして崩れ落ちた。 暫く放心していたカカシが思い出したかのようにズルリとサクラの中から抜き出した。 赤く染まったソレに苦笑する。 まさか、オレがこんなに嫉妬深いとは・・・ 自分では結構淡白な方だと思ってたんだけど。 身体の下で意識を手放している愛しい少女。 乱れた衣服と戒めのリボン。 汚れたシーツ。 カカシは身体をずらして横に並ぶと、自分の胸へとサクラを引き寄せた。 涙で張り付いた髪を手で払ってやる。 サクラは誰にも渡さない・・・ 愛しげに頬を撫でて抱きしめる。 ピクリと少女の薄紅色の髪が揺れた。 「・・・・。」 虚ろな瞳は辺りを彷徨い、最終的に目の前のカカシへと辿り着いた。 「先生・・・・」 もそりと動いた瞬間、声にならない叫び声が上がる。 「!!」 どこが、ではなく身体中に激痛が走った。 しかも・・・両手首が縛られている・・・・。 「・・・ッッ。何、コレ?!」 信じられない、という顔で再びカカシへと視線が戻った。 「・・・説明して。」 自分は確かナルトの家にいたはずだ。 先生は・・・今日は用事があるって・・・ だから私・・・。 すっかり酔いが覚めたようで、サクラの受け答えもしっかりしている。 「こっちが説明してもらいたいね。何であんなトコにいた?」 「え?だって、誕生日会・・・・」 サクラが『あ!』と表情を変えた。 そうよ。 元はといえば先生が悪いんじゃない! 誕生日、二人でお祝いしたかったのに。 「何、飲んだ?」 「・・・へ?」 「お酒、飲んだでショ。」 お酒? あぁ・・・。 「シャンパンを少々。」 「少々、ね。」 サクラの返事をそのままオウム返しにカカシが繰り返す。 「少々で、アレなんだ・・・。今後一切サクラはアルコール禁止ね。」 「えぇ〜〜!すごく美味しかったのに・・・」 一方的なカカシの言葉にサクラが不満を漏らした。 「・・・まだわかんないみたいだねぇ。第二ラウンド、いく?」 すぅーっと瞳を細め、拘束されたままの両手首を引き上げる。 「イヤ!!」 途端に思い出された、先ほどの行為。 手首を持ち上げられただけで走る鈍い痛み。 「なんであんな事・・・。」 「だってアレはサクラが悪いんでショ。ね、覚えてる?ナルトとサスケにキスしたんだよ・・・オマエ。」 頬に、だけど・・・ね。 でもそんなことは関係ないし。 どこであろうとオレは許さないから。 「やだ、うそ?!」 「こんなことで嘘なんか吐かないよ。とにかくアルコールは禁止。」 カカシの威圧的な態度にサクラもムッとする。 なんなのよ。 大体さぁ、最初に怒ってたのは私のはずでしょ?! そんなにヤキモチ焼くぐらいなら、たまの休みぐらいかまってよ。 しかも、・・・年に一度の特別な日なんだし!!! そーいえば・・・まだ言ってなかったっけ? 「明日、何の日か知ってる?」 「誕生日。」 あっさりと答えられ、サクラが戸惑う。 「3月28日はサクラの誕生日。サクラが生まれた大事な日だよ。」 「・・・知ってた?」 「もちろん。」 即答したカカシが忍服のベストのポケットを探り、小さな包みを取り出した。 「コレが・・・オレの今日の用事。」 特にラッピングされている風もない包みの中から出てきたものは『ブレスレット』。 しかも、サクラはそれに見覚えがあった・・・。 以前、任務で波の国へ行った時の・・・アレだ。 間違いないわ!見間違えるはずないもの!! すごく・・・すごく素敵だな、って・・・ 「先生、ソレ!!」 「そ。波の国でサクラがガラスに張り付いて見てたヤツ。コレでショ?」 波の国での任務終了後、里へ戻る途中に冷やかし半分に覗いていた店の中にソレはあった。 材質はガラスなのだが一粒一粒の中に『サクラ貝』という小さなピンクの貝殻が埋まっている。 熟練した職人による手作りのガラビーズ・・・粒が小さければ小さいほど細工が難しく高値がつく。 サクラが見たものはカカシが手にしているものより数段粒が大きかったが、宝石の類となんら変わらない値段だったと記憶している。 サクラは、改めてカカシが持っているブレスレットを見た。 粒は極小。しかもニ連になっている・・・。 瞳を見開き、カカシの手元を見ているサクラの顔がだんだんと表情を変える。 驚きから・・・喜びへと。 私、馬鹿みたいだわ。 誕生日のこと、話しそうになるのをすごく我慢して驚かせようとしたのに・・・ 先生は誕生日を知っててプレゼントまで!! しかも・・・私が欲しかったモノを、よ?! カカシの何も持たない方の手が伸びてきて、器用に片手のみでリボンを解きにかかった。 あんなに固く結ばれていたのが嘘のように簡単に解けたソレを床へと落とす。 「赤くなってる。」 くっきりと残っている戒めの痕。 「でも、謝らないから。」 カカシの言葉にサクラが俯く。 「もう少し自覚してよ・・・サクラ。オレがこんなに愛してるのに。」 顔を覗き込まれ、無理やりに合わせられた瞳と瞳。 「・・・ごめんなさい。」 消え入るようなサクラの声がカカシの耳を掠めた。 「ホントに・・・。オレのいない所でほかの男に会ったり、お酒飲んだり・・・もうこういうのはナシだよ?」 「・・・うん。」 サクラが頷くのを確認して、カカシはサクラの腕にブレスレットを付けた。 「ほら・・・サクラによく似合う。」 「・・・」 嬉しさのあまり言葉が出ず、代わりに透明な雫がはらはらと零れる。 サクラは自らの腕を胸に引き寄せて真近にあるカカシの顔を見上げた。 「先生、・・・ありが・・とう。」 『どういたしまして』といういつもの優しい声を、サクラはカカシの腕の中で聞いた・・・。 腕にサクラを閉じ込めたままカカシが囁く。 「サクラのご両親には了承済みだから・・・泊まってくよね?」 「了承済みって・・・」 「里に帰ってきて真っ先にサクラの家へ行ったんだよ。それでナルトの家にいるのを教えてもらったの。その時ついでに修行するからサクラを預かりますって言っといたし。」 「・・・先生。」 「最初からそのつもりだったんだ。そうすれば・・・日付が変わってサクラの誕生日に一番最初に『おめでとう』が言えるのはオレでショ?」 カカシの言葉に止まっていた涙が再びサクラの頬を伝う。 自分を生んでくれた両親よりも先に好きな人に出会う朝。 一つ年をとったからと言ってその分すぐに大人になれるわけではないけれど。 先生の傍にいるために・・・ 先生に見合う人間になるために・・・ 最大限の努力を誓います。 だからお願い。 この先10年後も20年後も・・・一緒にいさせて。 「なんか気持ち悪い。」 おとなしくカカシの腕の中にいたサクラがポツリと呟いた。 「ゴワゴワする。」 その表現にカカシがぷっと吹き出す。 少しばかり乱暴に扱われたサクラの身体、そこから滲んだ愛液は血液を多量に含み、しかもカカシの精液とも交じり合って・・・そのまま放置されていた。 「お風呂、入ろうか。」 コクリと頷いて身体を起こそうとしたサクラはあまりの痛さに顔をしかめる。 「先生の馬鹿・・・動けないじゃないのよ!」 すっかりいつものサクラだな、と苦笑を浮かべ、ベッドから起き上がったカカシがシーツごとサクラを抱え込んだ。 「浴室までお運びしますよ、お姫様。」 シーツでグルグル巻きにしたサクラを抱いて浴室へと向かいながら、思い出したかのようにカカシが訊ねる。 「で、結局さぁ・・・シャンパンを用意したのは誰?」 「え・・・?いのだけど?」 「ふーん。いのちゃんか・・・」 カカシの中に存在するブラックリスト。 当然、今日ナルトの家にいた集団は書き込み済みだ。 そこに新らしく『いの』が加えられたということは言うまでもない・・・ アキ様に献上。 遅くなりました。申し訳ないです。 やたらと長いだけのシロモノになってしまいましたが・・・しかもぷちエ○。(爆 引き取っていただければありがたいです。 2002.09.01 まゆ |