目隠し鬼





・・・なんか聞こえる


猫?






やや斜め前方に視線を飛ばしたカカシが更に目を凝らした。

生い茂る若葉の中、見え隠れする淡い桃色は花にしては大きすぎる。
かといって、人と判別するには小さすぎるし・・・。

ミャーミャー泣いているのは確かに猫の声。

カカシはその問題の木へと興味本位に近づいた・・・。











「だ、だれ?!」

うずくまって見えたピンクの塊が動き・・・それが少女だと知れる。
不意に上げた顔には涙の痕。
そして、その細い両腕には震える子猫が抱え込まれていた。

   登ったはいいが、降りられなくなったか・・・

「何やってんの?」

解っていて・・・カカシは悪戯っぽくそう告げた。
先ほどまでその端正な顔を覆っていた不可思議な面は外され、懐へとしまわれている。
そのためか、少女は不意に現れたカカシに驚くふうもなく・・・すぐ隣に立つ男を見上げた。
しかし目が合った途端、馬鹿にされていると感じたのかフイっとそっぽを向く。
桃色の髪がサラサラと流れた。

「べつに。サクラ、なにもしてないもん。」
「そう?」

すぐに立ち去ると思われた怪しげな風体の男は、何を思ったのかそのまま少女の隣に腰を降ろした。
そう太くもない枝に二人と一匹・・・明らかに重量オーバーだ。
居心地悪そうにサクラが身を捩っただけで枝が大きくしなった。
「きゃ!」
両腕が塞がっている為、得体のしれない男に寄りかかるしかない。
大きな腕に抱きとめられ、サクラは真っ赤になって俯いた。

「くくく。降りられないなら手を貸すよ?」
「だ・・だいじょうぶ!サクラ、ここにいたいのッッ」
「ふぅん?でもその猫は下へ降りたそうだけど・・・降ろしてあげたら?ホラ、嫌がってる。」
男の言葉どおりサクラの胸では先程の衝撃で恐怖心を煽られたのか、しきりと子猫が手足を動かしていた。

サクラが降りられなくなった子猫を見つけ木に登ったのはもう二時間も前のこと。
登るのは意外に簡単だった。だから降りるのも簡単なハズ、だったのに。
木の上からの見慣れない視界はサクラの足を竦ませ、暴れる子猫が両腕の自由を奪ってしまう。
今なお泣き続ける子猫を見て・・・サクラは心を決めた。

「・・・降りるの、手伝ってくれる?」

ボソっと呟くと同時に浮遊感を感じたサクラは反射的にぎゅっと目を閉じる。
浮遊感はすぐさま落下に変わり、トンとつま先に軽い衝撃を受けた。
馴染みある感覚に目を開けたとき、そこはすでに地上で・・・サクラは二時間ぶりの地面を踏みしめていた。

「・・・あ・・りがと。」

下へ降りられたことに安堵し、サクラはやわらかく微笑んだ。
その瞬間、力の抜けた腕の中から勢いよく子猫が飛び出し、あっという間に草むらの・・・そのまた奥へと姿を消す。
「・・・あ!」
「捕まえてこようか?」
「・・・・いいの。サクラの猫じゃないし。」
「へ?」
間の抜けた顔を晒した男にそれでもサクラはきちんと答えた。
「降りられなくて鳴いてたから。かわいそうだったの。」

   ・・・サクラちゃんもでショ。

至極真面目な顔で説明してくれたが自分もそうだとは思っていないらしい。
思わず吹き出しかけ、なんとか堪えた。
・・・この少女は殺伐とした毎日を送るカカシに何かを思い起こさせる。
それは春の光のように暖かく、凍りつきかけた心を癒した。

   もう少し、この子と話していたいな。

「じゃ、サクラも家に帰るよ。」
カカシの気持ちも知らず、そそくさと踵を返したサクラの腕を掴み強引に引き止める。
「お兄ちゃんと遊ばない?」
「え?」
今度はサクラの驚く番だった。

「サクラと遊びたいの?」
うんうん、と頷く男の顔は本当に嬉しそうに見える。
折角の誘いを断るのも気が引けたがサクラは『どうしても』『早急に』やらなければならないことがあった。
「ごめんね、お兄ちゃん。サクラ、お家に帰る。」
「何でさ?」
「なんで・・って・・・。お兄ちゃん?」
ぎゅうっと掴まれた腕に目を落とし、その不安な色を湛えた翡翠の瞳が上目遣いに再び男を仰ぎ見る。

   たまんないね。
   征服欲をソソルよなぁ・・・

「まだ家へ帰らないといけない時間じゃないでショ?」
「う・・ん。だけど・・・。」
もじもじと言葉を濁す少女にカカシが大人気なく詰め寄った。
「鬼ごっこでもかくれんぼでも・・・あやとりだって出来ちゃうんだけどなぁ、オレ。」
「ホント?!」
カカシの言葉にサクラの瞳が輝いた。
「本当。・・・どうする?」
「でも・・・。」
「サクラちゃん?」
「サクラ、やっぱり帰る!」
掴まれた腕を振り切ろうと自分へと引き寄せるが、当然の如くカカシがそれを許さない。
困ったサクラは瞳を潤ませて懇願した。
「お兄ちゃん、離して!」
「帰らないといけない理由を教えてくれたらね?」
「・・・。」

「じゃ、帰さなーい。」
無言のサクラの腕から離した手を素早く細い腰に回し、カカシはそのままスタスタと歩き出した。
荷物のように抱え上げられ、サクラが足をバタつかす。
「ダメだってば!サクラ、もう我慢できないのッッ」
「へ?何が?」
暫くの沈黙の後、頬を染めたサクラが小さな声でポツリと呟く。
「・・・おしっこ。」
「あぁ、なんだそんなこと?その辺でしちゃえば?」

   そんなこと?・・・わかってないのね!
   男の子と女の子はちがうんだから!!

「お外なんてヤダ!はずかしいもん。」
「こんな森の中だよ、誰も見てないって。」
「見てなくてもヤ。」
つーんと顔を背ける。
そんなサクラの態度をカカシは邪な笑みをはせ、声に出さず喉の奥で笑った。

   見たところ4〜5歳ってトコだよなぁ?
   そういうコト、恥かしいって感じたりしちゃうんだ・・・

「そう?じゃ、オレの家においで。すぐそこだから・・・」


そう言ったかと思うとカカシはサクラを抱きなおし、風をきって走り出した。










「スッキリした?」

お手洗いから出てきたばかりのサクラにニヤニヤとカカシが話し掛けた。
「お兄ちゃんのえっち!」

   くくく。えっち、ねぇ・・・?

サクラに軽く睨まれて肩を竦ませたカカシが言葉を続ける。
「さて、なにして遊ぼうか?」
「ホントにサクラと遊んでくれるの?」
「もちろん♪鬼ごっこでもするか?」
「うん!」
「じゃ、オレ鬼になってやるから早く隠れな。・・・二人だから家の外に出るのはナシだぞ?」
「わかった。んっとぉ・・・100、数えてね?」
「ハイハイ。い〜ち、に〜ぃ、さ〜ん・・・・」
早速目を閉じて数え始めたカカシを背にサクラはぱたぱたと駆け出した。

「きゅうじゅうは〜ち、きゅうじゅうきゅ〜う・・・ひゃく!!さて、何処に隠れたんだか・・・。」
気を張り巡らすとすぐさま寝室のベッドの下に、淡くふわふわな気配を感じ取れた。
慣れ親しんだピリピリとした殺気ではなく甘ったるい砂糖菓子のような気配。

   またベタな所に隠れたもんだ。

苦笑しながらそれでもカカシは探すフリをして押入れの戸を開けたりしてみる。
「サークラちゃん?どこかなぁ?」

   くすくすくす。
   サクラ、そんなトコに居ないもんねー

サクラが笑いをかみ殺す。
そんなサクラの気配を伺いながらカカシはゴミ箱を覗き込み、テーブルの下を確認する。
「居ないねぇ?こっちかな?」
・・・やっとサクラの隠れる寝室へと足を踏み入れた。



「ん〜・・この辺がアヤシイよなぁ?」
ベッドの上の掛け布団を捲ってみる。
「あれ?おっかしいなー・・サクラちゃーん?」

   絶対へんじ、しないもーん。

サクラの位置からはウロウロと動き回るカカシの足が見えている。
すぐ近くにいるのに全く自分に気付かないカカシが可笑しくてサクラは思わずプッと吹き出した。

「・・・この辺から声が聞こえたんだけど?」

屈みこんだカカシがベッドの下へ手を差し込むと指先がツンと何かに触れる。
カカシはさらに手を伸ばしてその柔らかなモノを握った。

「ん〜〜」
両手で口を抑えているのだろう・・・くぐもった声が聞こえる。
「なんだ、コレ?」
カカシが捕まえた足に手を滑らせるとサクラは堪らず笑い声をあげた。
「ぷくく。ヤダ!くすぐったぁい!!」
「はは。サクラちゃん見つけ!ホラ、出ておいで。」

   むぅ。みつかっちゃった・・・

すごすごと這い出してくるサクラの髪に付着したホコリを払いながらカカシが呟く。


「今度はサクラちゃんが鬼だよ?・・・こっちへおいで。」










「・・・それなぁに?」

カカシの手元を見ながらサクラが訊ねた。
「包帯。怪我した時にくるくる巻くヤツ〜。今からサクラちゃんに使うの。」
「どうして?サクラ、けがなんてしてないよ?」
「オレが忍びだから。」
「?」

   お兄ちゃんが『忍び』なのはお洋服でわかるよ?
   だからいきなり木の上に現れたときも驚かなかったでしょ、サクラ。

不思議そうに首を傾げたサクラにカカシが言葉を続けた。
「オレが隠れちゃうとサクラちゃん、多分(っていうか、絶対?)オレを見つけられないからね?だからコレを巻いて・・・」
そういうなりサクラを引き寄せると手早く瞳を隠すように巻きつけ始めた。
「え?え?!」
慌てて瞳を覆っている包帯に手を伸ばしかけたサクラに、カカシは威嚇するように声をあげる。
「だーめ!」
「で、でも!なんにも見えないよぅ・・・」
「それでいーの!目隠し鬼なんだから♪」
「『めかくしオニ』?」
「そうそう・・・オレは隠れないし、この部屋から一歩も外へ出ない。だからサクラはそのままオレを捕まえるんだよ。」
「ふぅん?サクラ、こんなのはじめて。」
「そう?・・・ホラホラ、こっちだよ〜」
包帯の端を結び終えてカカシがサクラから一歩退いた。
声を頼りにサクラが一歩踏み出す。
恐る恐る伸ばした手はカカシには届かない。
「お兄ちゃん?」
「はいはい・・・ちゃんといるよ?」
やや右の方から声が聞こえ、サクラは身体の向きを変えるとニ歩進んだ。
狭いカカシの寝室は目隠しによって広大な空間と化している。
恐怖心からサクラは大胆には動けないでいた。

「どこぉ・・?」
「ココ。」

フゥーっとサクラの首筋を暖かい息が拭きかかる。
「ひゃ!!」
ビックリして首をすくめるサクラに忍び笑いが聞こえてきた。
「くっくっく・・・鬼さんコチラ・・手の鳴る方へ・・・」
今度は左から手を打つ音が聞こえてくる。

   お兄ちゃんのイジワルっっ

「う〜。ぜったい捕まえるんだから!」
元来勝気な少女のサクラは思い切りって足を踏み出す。
「あ!」
数歩進んだところで膝が何かにぶつかり、サクラはそのまま前方へと倒れこんだ。
瞬間、柔らかな衝撃にほっと息をつく。

   ココ・・・ベッドの上だ。

「うごかないでよ、もう!サクラ、つかまえられないでしょぉ!」
サクラはぺたんとそこへ座り込んで何処にいるともわからないカカシに文句をつけた。
と、同時にベッドが大きく軋む・・・

「こんなに近くにいるのに?」
ひやりとした指先がサクラの小さな顎に添えられ、つぃっと上を向かせた。
包帯を巻きつけられることによって視界を奪われた少女はされるがままだ。
薄紅色の頬、捲れ上がったスカートから伸びる柔らかそうな太腿に・・・チラリと顔を覗かせている下着。

   ホント、ヤバイって。

「・・・お・・にいちゃ・ん?」
カカシはごくりと唾を飲み込んだ後、自分を見上げる薄く半開きになっていた唇にちゅうっと吸い付いた。
「んっっ!」
「オレを捕まえられなかったバツだよ。」
カカシが悪戯と欲望を半分に・・・サクラの両足を割り、薄い下着の上から割れ目に沿って指をつぅっと滑らせる。
するとサクラは予想外の甘い声を上げて鳴いた。

「あん!」

   あら、ま。

「・・サ・クラちゃん?・・・もしかして自分で触ったこと、ある?」

カカシはサクラの中心に触れたまま動きを止めた。
「やぁ!・・おねがいっ・・ママには言わないで!」
サクラの過剰な反応にカカシは意地悪く片眉を上げて笑った。
「ははは!怒られたんだ?」
「ソコは触っちゃダメ、って・・・ママが・・・。」
泣きそうになりながらカカシを見上げるが、相変わらずそこは闇が広がるのみだ。
「そっか。じゃ、サクラちゃんの代わりにオレが触ってやるよ・・・」
「ダメ!」
「何で?・・・ココ触ると気持ちイイって、知ってるんでショ?」
耳元で囁かれ同時に再び蠢き始めた指にサクラは身を捩って抵抗する。
「んっ・・んっっ!」
カカシが何度も擦ると薄い下着の上から敏感なところがプックリと膨らんできた。

   かわいいねぇ。

執拗にソコを攻める。
「ぁんっ・・あ!」
サクラが一際大きな声をあげ、思わず腰を浮かした。
熱をもち、ヒクヒクと収縮を始めていた箇所が一気に弛緩する。
・・・カカシがあまりの気持ち良さにぼぅっとなっている少女を眺めながら、ニヤリと笑った。

「イッちゃった?・・フフ。すごく可愛かったよ、サクラちゃん。」









 

あれから何度も指でイカした後に、やっとカカシがサクラを開放した。

「ママには内緒にしておいてあげる。」

初めて自分以外の人から与えられた刺激に酔いしれ、思考をマヒさせたままの幼い少女に罪悪感という名の鎖を刷り込む。
カカシの手によって包帯が解かれ、色が戻ったばかりのサクラの視界。
『ママ』という言葉にサクラは怯えた瞳をカカシに向けた。

   だーかーらー、そういう瞳をしたって自虐心を煽るだけなんだって。
   サクラが欲しいと思ったんだ・・・
   オレは手段は選ばないよ?

「・・・だから、明日も遊びに来るだろ?」
来ないとママにバラす、そういったニュアンスを多大に含んだカカシの言葉。

「来るよな?」
気持ち良かっただろう?、と瞳が物語っている。

   サクラ、ヘンなの。
   お兄ちゃんに見つめられるだけでドキドキがとまんない。
   ゆびが・・・お兄ちゃんの指がきらめく度におしっこするところがアツイの。
   ・・・さわってほしい、って思うの。

暫くの沈黙の後、頬を赤く染めたサクラがコクンと頷いたのをみて、カカシは満足気に笑った・・・。


   当分入れるのは無理だろうから・・・
   暫くは口で我慢するさ。

   明日は『お口』で遊ぼうよ・・サクラ・・・











CAIN様に捧げます。
ビンゴリク『暗部×幼女』・・・だったのですが・・・
確か、エ○・・OKだったよねぇ?
え?こんなのは違うって?
・・・スミマセン。諦めてください。(笑)

犯罪者な自分にカンパイ!!(泣)

2003.010.2
まゆ