邪心





   帰ってこなければいい。



   どこかで野垂れ死のうが、オロチ丸に喰われようが・・・
   二度とサクラの前に姿を現さなければ、それでイイんだ。
   後のことはオレが全部引き受けてやるよ。

   なぁ、サスケ・・・



   オマエなんて


   死んじゃえ。












昼下がりの賑やかな通りを歩きながらカカシはほくそえむ。
先ほど5代目火影からサスケが里を抜けたことを聞いたばかりだ。
もうすでにシカマルを中心とした下忍選抜のチームが後を追っているとのこと。
「あいつ等・・・失敗しないかな?」
面布の下、頬を緩ませて思わず本音がポロリとこぼれる。

   ホント、馬鹿なヤツ。
   あれほど忠告してやったのにな。
   だからオレはもう遠慮しなーいよ!

   番犬(いやいや、番キツネか?)も出払ってることだし・・・





カカシは一軒の家の前で立ち止まり、インターフォンを押した。
出てきたのは想い人に似た面持ちの婦人。
白いエプロン姿のその人は自分を見るなり改まって頭を下げた。
「カカシ先生。いつも娘がお世話になっております。」
「いえ、大したことは出来ませんで。・・・サクラさんは居ますか?」
「それが、居るには居るのですが・・・。」
ちらりと家の中へ視線を向け、言いよどむサクラの母に助け舟のようにカカシが言葉を続けた。
「えぇ。予想はついています。塞ぎ込んでいるのでしょう?理由をご存知ですか?」
「・・・あの子、何も言わなくて。」
「サスケのヤツが里を抜けたんですよ。音の忍者にそそのかされましてね。連れ戻すために数名が後を追っているのですが・・まだ何の連絡も有りません。」
「そうでしたか・・・。」
サクラの母は合点がいったように頷き返した。
『サスケ』とはサクラのアカデミー時代からの想い人だ。
同じ班になれたことを、それはもうクリスマスと正月が一度に来たように喜んでいた。
任務が始まってからは何かにつけて『サスケくんが・・・』と話題にしていた娘の顔を思い出す。
「暫くの間、私の方で娘さんをお預かりしたいのですが・・かまいませんか?」
「え?」
あまりにも唐突なカカシの申し出にサクラの母は小首を傾げた。
「雑務処理の人手が足りないのです。忙しくしていた方がサクラも気が紛れるかと思いまして。」
「そういうことでしたら・・・少々お待ちください。只今呼んで参ります。」
部屋に篭りっぱなしよりは随分いいだろう、そう判断したサクラの母は玄関にカカシを残して二階にいるサクラの元へと向かった。












自分の隣を歩く薄紅色の頭に視線を落とす。
『宜しくお願いします』と、サクラの母は何の疑いもなくカカシに娘を託した。

   先生ってヤツはどうしてこう信用されやすいのかねぇ?

すんなりと手に入った少女は相変わらず俯いたままだ。
一言も言葉を発しない。
「あ、サクラ!こっち。」
「?」
真っすぐ歩を進めていたサクラの腕を引き、十字路を右に折れる。
「アカデミーへ行くんじゃないの?」
アカデミーへ向かうなら真っすぐだ。
曲がる必要は無い。
雑務・・・書類の整理につき合わされるとばかり思っていたサクラは不思議そうにカカシを見上げた。
カカシはその赤い瞳に、気付かれないよう溜息を零す。
「・・・あのねぇ。いくら人手不足でもこんな状態のサクラを連れてはいけないよ。瞳が真っ赤。」
「わ、私なら大丈夫よ!ちゃんと仕事できるってば!!」
「サクラが平気でも周りの皆が気にする。」
間を空けず言い返され、しかももっともな言葉にサクラは口を噤むしかなかった。
いつの間にか繋がれていた手が僅かに引っ張られ、今度は左に曲がる。
「・・・何処行くの?」
「オレの家。」
「へ?」
「今、サクラに必要なのは温かな食事と睡眠だと思うんだけど。違う?・・昼も食べてないみたいだし。」
「・・・」
ぐっと顔を覗き込まれ、繋がれた手に力がこもった。
ただそれだけのことなのに、サクラの身体がにわかに強張る。

   これって・・ホントにカカシ先生?
   全然知らないヒトみたい。

例え『違う』と言っても聞いてもらえそうもない強引さで、今なおカカシは歩いている。
理由をつけて家に帰るべきだと判断したサクラが口を開きかけた時、それを遮るようにしてカカシが告げた。

「オレと一緒にいて損はないデショ?なんてたってサスケの上司だからね・・サスケに関する最新の情報がいち早く入ってくる。」



『サスケの情報』・・その言葉に呪縛されたようにサクラは自らカカシの家の門を潜った。
  











「・・・どうしても食べなきゃ駄目?」
言葉とは裏腹に、目の前に用意された食事にサクラは心底驚いていた。

   カカシ先生に料理ができたなんて!

バランスの取れた彩の良い食事。
なのに、どうしても食欲がわかない。
それは料理のせいではなく自分の問題だ。
申し訳なさそうに俯いていると、自分用のミネラルウォーターを片手カカシがに台所から戻ってきた。
そのままサクラの向かいの席に座る。
「食べさせようか?」
「結構です!」
カカシの冗談ではなさそうな提案を即答で断る。
目の前でくくくと笑う声を無視し、サクラはスープに口をつけた。
「・・・おいし。」
「デショ。」
愛情がこもってるからねぇ・・と続けた後、カカシはおもむろに額当てを外した。
続いて面布も引き下ろす。
「サクラ?」
カカシの声を引き金にサクラの手から落下したスプーンは見事にスープを飛び散らせた。
自覚はなかったが、惚けていたらしい。
「何やってんの。」
慌てる風もなく、カカシは椅子の背に掛けてあったタオルでテーブルを拭く。
「ごめんなさいっっ!だって・・あの・・・・顔!!」
「あれ?サクラは見たことなかったっけ?」
カカシはふと手を止めてサクラと視線を合わせた。
自分の動揺を何処となく嬉しそうに見ているカカシにサクラはたどたどしく答える。
「う、ん。波の国で額当てを取ったトコは見たけど・・・。」
「そうだったかな?・・で、どう?」
「どうって・・?」
「サクラの好み的に。」
「はぁ?」
「オレってカッコイイ?」
「何言ってるんですか先生!バッカじゃないの?!そんなことよりサスケくんは・・」
「まだ何も。」
気のせいか、急にカカシの声のトーンが落ちたような気がした。
何かいけない事を言ってしまったのかと考えを巡らせるサクラの視界の隅で、カカシがイライラと額当てを弄んでいる。
「サスケの何処が好き?」
「・・・全部。」
呟くような掠れた声の問にびくつきながらもサクラは正直に答える。
「スープだけでも飲んで。」
何か意を決したようなカカシの表情とかみ合わない会話。
サクラの背筋に緊張が走った。












自分と二人きりで居るというのに意識なんて全然されなくて。
あくまでも先生と生徒。
そもそもサクラが家にまでくっついて来たのはサスケの情報が知りたいだけのこと。

   ・・・そんなこと十分に分かっていたけどね。

赤い瞳も、その下のクマも・・・全てはサスケのため。

   やっぱり犯す。
   今、決めた。

ギリギリの判断。
カカシにはもう・・・他の選択の余地など、無かった。



目の前でサクラがスープを飲み終える。
「ご馳走様でした。」
「いえいえ、お粗末。」
食い入る様な視線を避け、ぎこちなく立ち上がったサクラは空になった皿を流しへと運ぶ。
その後をカカシが音もなく忍び寄った。

重力に反して不意に身体が浮き上がるのを感じた次の瞬間、サクラはカカシの腕の中に居た。
いわゆる『お姫様だっこ』である。
「な!何すんの?!」
「・・・『夢』だったデショ?お姫様だっこ。」
以前、いのとかいう子とサクラが話している会話を盗み聞いたことがある。
「相手が先生じゃ意味無いでしょ!・・ってか、何で知ってんのよ?」
「さぁね。ドウシテデショウ?」
「ふざけてないで降ろしてよ!」
「はいはい。向こうのベッドの上にね。」
「・・・先生?」
サクラはカカシを見つめた。
今までにないほど近くにある顔は真っすぐ向けられており、サクラに視線は降りてこない。
カカシの腕の中で揺られながら、サクラの心に急速に不安が広がった。
「先生・・・家に、帰りたいんだけど。」
「駄目デース。先生としてはサクラの寝不足を放っておけません。どうせ家に帰ってもサスケのことが心配で寝れないんデショ?」
そういいながらカカシは器用に足のみで寝室のドアを押し開ける。
ゆっくりとベッドの上に降ろされると同時にカカシの適度な重みがサクラを拘束した。
「何も考えず寝る方法を知ってる?」
自分に何が起こっているのか、理解しようとすればするほど分からなくなる。
目の前の男は尊敬するべき上司であり、先生のはずだ。

   でも。
   こんな男は・・・知らない。

サクラは弾かれたように暴れだした。
「そんなことより・・放してよ!!」
「アルコールとセックス。」
「え?」
「聞こえなかった?もう一度言おうか?」
サクラの返事を待たず、カカシはその耳元へ口を寄せた。
「アルコールとセックス、だよ。」
鼓膜を震わす低い声と吹き付けられた吐息にサクラがゾクリと身を震わす。
その様子にカカシは下ひた笑いを張り付かせて訊ねた。

「サクラ、セックスしようか?・・・サスケのことなんて忘れてぐっすり眠らせてあげるよ。」












「もう帰らないと。お母さんが心配するわ。」
カタカタと震えながらもなるべく平静をよそってサクラが告げた。

   ワタシハ ナニモ キイテナイ。
   ナニモキコエナカッタ。

「残念でした!オレ、サクラのお母さんにサクラを暫く預かるって言ってきたし。」
カカシの言葉にはっきりと落胆の色が見て取れる瞳にはじわりと涙が滲んでいる。
歴然とする力の差。
サクラはすでに暴れることを止めていた。

   ま、2、3日もあれば十分だよ。
   サクラの頭ン中、オレのことでいっぱいにしてあげる。

「お願い・・放して。」
「駄目。」
「助けて!サスケくん!!」
「・・・今のは頂けないなぁ、サクラ。オレ、サスケ大嫌いなんだよ。」

   死亡報告とか、完全に抜け忍になったとか・・・
   はやくそんな報告を聞かせてくれないか?
   なぁ、ナルト・・・

密着しているサクラとの身体の間で、再び小さな手がカカシの胸を押し上げようと頑張っている。
そんな些細な抵抗をものともせず、カカシはたやすく片手でその動きを制した。
「うっ・・く」
捻られるように両手を頭の上で縫い付けられたサクラは懇願するように叫んだ。
「やめて・・怖い!」
「酷くはしなーいよ。サクラ次第だけどねー。」
カカシの間延びしたいつもの調子の声がさらに恐怖心を煽ったらしい。
サクラの身体は完全に強張っていた。
それをほぐすようにカカシは服の上からサクラの双丘を揉みしだき、細い首に顔を埋めて下から上へと舌を這わせる。
「ふぅ・・んっ・・・」
「すごく可愛いよ・・・サクラ。」
手触りのよい薄紅の髪も苺色の唇も甘い吐息も。
「サスケにはやらない。」
カカシの呟きにサクラが一瞬だけ素に戻った。
「せんせぇ・・・もしかして・・私のこと、好き・・なの?」
「意外そうだねぇ。好きだと言ったらどうなの?サスケよりオレのことを好きになってくれるの?」
思ってもみなかったカカシの言葉に、サクラの瞳がこれ以上ないほどに見開かれた。
「無理なんデショ?・・・だから実力行使だよ。」
言葉を失くしているサクラにカカシは愛撫を再開した。

慣れた手つきで下着が剥ぎ取られ、長い指が遠慮なく淡い茂みを掻き分けてくる。
「イヤ!・・ぁあ!!」
「いつもどうやって触れてるの?」
「おねが・・い・・・やめ、て・・よぅ・・・」
イヤイヤと左右に振られるその目尻からは止め処なく雫が零れ落ちる。
サクラは恥ずかしさのあまり身を縮めた。

「サクラ・・・シタこと無いなんて言わせないよ、オナニー。」












「どっちがイイのかな?」

潤んだ膣の入り口に人差し指を添え、ぐるりと一周させる。
吐息が漏れるわけでもなく、サクラは僅かに腰を引いただけだった。
「んー・・」
イマイチな反応に、カカシはもう一方のポイントへ・・・蕾へと指を滑らせた。
粘質な液を塗り込むように指の腹を擦り付ける。
「あぁっ・・ン!」
「くく。こっち、ね。」
びくんと今まで以上に撥ねた身体にニヤリと笑うとカカシは更に指を動かした。
叫び飽きたのか・・サクラはすっかり大人しく、カカシのされるがままになっている。
それどころか、与えられる快感についてこようと必死だ。
「こっちの方は経験がないとカンジないからねぇ。ま、オレがちゃんと開発してあげるケド。」
両手の束縛もとうに必要をなくしており、カカシは空いた手の中指をゆっくりとサクラの中へ沈めた。
「ンッ・・んん!!」
「サクラの中・・・アツイ・・」
抜き差しするたびに水音とサクラの喘ぎ声が響く。
焦らされる事に耐え切れなくなったのが、サクラはカカシの指が蠢く秘所に自らの指を割りこませた。
「へぇ?」
わずかに驚きの声を上げてカカシが顔を綻ばす。
形の良い眉を寄せ、瞳を閉じたままのサクラは拙いながらも一心に指を動かしている。
そのあまりの可愛さにカカシはサクラを抱きしめた。

   サスケにも・・誰にもやらない。





カカシは何度も何度も繰り返す。

『今、サクラに触れているのは誰?』
「カ・・カシ・せん・・せぇ・・・」

『サクラをイカしてあげてるのは?』
「・・・カカ・シ・・」

「ごーかく〜!大変良く出来ましたvvv」



満足そうに笑うカカシの顔を、サクラは薄れゆく意識の中で凝視し続けていた。















ただ単にえろが書きたかった・・・・。(爆)
サスケもナルトも居ない今がチャンス!カカッスィー(邪)

2003.10.15
まゆ