大人のオモチャ.....sleepig beauty...... 4





「で、どうだった?」

身を乗り出して聞き返され、紅は意外な顔をした。
数時間前に見てきたカカシ宅での出来事を皆の前で面白おかしく語り終えたところだ。
何が『どうだった』、のだろう?
「へ?アンタ、何が知りたいの?」
紅が素朴な疑問を返す。
「いいから・・・もったいぶらずに教えなさいよ!見たんでしょ、カカシのアレ。」
周りに居た数人が動きを止めた。
「・・・見たけど。」
その返事にわらわらと再び人が集まり始めるのを紅は肌で感じた・・・。

此処は上忍控え室。
上忍に男も女もないのだが、男女兼用のこの部屋に男の姿が確認されなくなって久しい。
割合では圧倒的に数が少ないとは言え、数人集まればどんな男をも凌駕する。
それが女というものだ。
現在の上忍控え室は女性更衣室と大差なかった。

「形は?」
「んー・・こんなだったかしら?」
『重要』と判を付いてある書類をひっくり返し、その辺にあった鉛筆でサラサラと走り書きをする。
そのリアルさに周囲からどよめきが上がった。
「アンタ、絵上手いじゃない!」
「大きさは?」
「色は?」
調子に乗って飛び交う質問に答えるべく、紅はゆっくりと口の端を吊り上げて笑みを作った。

「紅、ねぇ・・紅ってば!!」
「何よ、もう。今いいところなのに!」
不意に肩を掴まれ、不機嫌な顔を隠さず紅が振り向く。
「中忍の坊やがアンタを呼んでるってさ。ホラ、あそこ。」
彼女が指を差した入り口の・・・ドアの影に隠れるように立っていた男が慌ててペコリと頭を下げた。

   意外とガッシリとした身体。
   束ねた黒髪。
   一文字のキズ。

   あれは間違いなく・・・


「どーしたんですか?イルカ先生??」












「不憫ね・・・」

聞けば聞くほどいたたまれなくなってくる。
次にバトンを渡す相手を見つけるべく里中を駆けずり回ったらしいが、未だに一人も見つけられず。
頼みの綱、ガイはリーの診察が終えた後すぐに任務へ向かったらしく里を出た後だった。
アスマは全く所在が不明。
途方に暮れて此処までやってきたらしい。

「そりゃー上忍の方々からみると取るに足らないものだとは思いますが、俺にだって任務はあるんです・・・」
依然、手にはかまぼこ板・・・もとい、『青春バトン』がきつく握り締められたままで、イルカは尻すぼみの小さな声で語った。

   そりゃそうだ。
   現在アカデミーは閉鎖状態。
   普段は教職のみの忍びすら里から出払っている。
   里の忍びを総動員して任務を捌くことを最重要課題としているのだから・・・
   暇なヤツなど居やしない。

「紅、明日非番って言ったなかった?さっき。」

   誰?
   今、チクッた奴は!!
   余計なこと言うんじゃないわよ!

背後からの同僚の声に紅の右の眉が少し上がる。
視線を感じイルカを見ると案の定すがるような目つきでこちらを見ていた。

   アタシはねぇ・・・
   無理やり非番をむしり取ったのッッ

紅がアンコに『みたらし団子5人前』で任務を代わってもらったのはカカシのシモの世話をするためじゃない。
『寝たっきりで弄繰り回されてるカカシ』や『その小さな恋人の純な反応』や『シモの世話する男どもの愉快な行動』を満喫するためだ。

ズズッ・・

今にも泣きそうな顔でイルカが鼻を啜り上げた。
回りからの視線が痛い。
人の良さ気なこの中忍は(いや、ホントに良いんだけど)すっかり彼女達の同情を得ることに成功したようだ。
   
   ・・・わかった。わかったわよ。
   アタシがやればいいんでしょう?!

深い溜息をつき、紅はイルカの手からか『青春バトン』をそっと取り上げた。
「ありがとうございます!!紅先生ッ」
「・・・いいのよ。」



此処は上忍控え室。
女達が占拠する砦。
たとえ上忍であろうとも・・・男が一歩でも足を踏み入れると、ただでは済まされない場所。

そんな聖域から満面の笑みで出てこれた男は後にも先にもイルカ一人だけだった。












ピンホーン・・ピンポーン

しつこいぐらいインターホンを鳴らす。
一向に出てくる気配のない部屋の主に紅は大声を張り上げた。
「居るのはわかってるんだからで出来なさいッッ」
イルカの話を聞いた時点で怪しいと思っていたのだ。
今のような里の状態で上忍クラスの『所在不明』なんてありえない。
紅は腹立たし気にガコンとドアに一撃を入れる。
「電気のメーターが回ってんのよッ!馬鹿アスマ!!」
暫くして、観念したのか・・・鍵の空く音がして重い鉄のドアが開かれた。
腰に手を当てた仁王立ちの紅に、アスマは溜息を吐きつつ先手を打って釘を刺す。
「・・・オレは嫌だぞ。」
「うるさいわね。アタシはまだ何も言ってないでしょ!!」
「そうかよ。じゃーな。」
あっさりと後ろ手にドアノブを引き、部屋へと消えかけたアスマを紅が許すはずもない。
戸が閉まる直前に紅は素早く片足を滑り込ませた。
「いい度胸じゃない?せっかくアタシがお医者さんごっこをしてあげようと思って誘いに来たのに。」
ゆっくりと・・・再びドアが開く。
「お医者さんごっこ?」
少し声が上ずっているのは気のせいなんかじゃないだろう。
すぐに話に食いついてきたアスマに、紅は惚れ惚れするほどの微笑をたたえて繰り返した。

「そう。アンタの大好きな『お医者さんごっこ』よvvv」












「ココでやるのか?!」
「そう。」

連れて来られたのは勝手知ったるカカシの部屋。

   いくらカカシが意識不明だからといってココじゃヤバイだろ?
   それとも・・・
   紅って実はそういう趣味が?!

慌てふためくアスマを他所に紅はさっさと準備に入った。
「さ、始めるわよ。アタシが医者でアンタは看護婦。でもって患者はカカシ。」

   3P?!

「・・・何言ってんの、お前。医者は俺だろ?ていうか、患者がカカシって・・・」
完全にアスマを無視し、布団を捲った紅はイルカを思い出して密かに笑った。
さすがにあのままでは悪いと思ったのだろう・・・何処から引っ張り出したのか、カカシはラフなスウェットを着用していた。

   ふふ。面倒ねぇ。
   あのままでも良かったのに。

何処から取り出したのか手術用の薄い手袋を嵌めた手がアスマへと差し出される。
「メス。」
「はぁ?んなモノねぇぞ。」
「もう!ノリが悪いわねぇ。クナイかなんかあるでしょう?寄越しなさいよ!」
「へーへー、ほらよ。」

   『お医者さんごっこ』とはよく言ったものだ。

すっかり騙されたことを悟ったアスマは投げやりな気分でクナイを取り出すと紅へ向かって軽く放った。
放物線を描いて落ちてくるソレを紅の細い指が絡め取る。
そのまま流れるような動作でカカシのへそへと突き立てる・・・寸でのところで止め、スウェットだけを真っすぐに裂いた。
パックリと開いた箇所から丸見えの、予想外の下着の出現にアスマが激しく動揺した声を上げる。
「何だよ、コレ!!!」
「イルカ先生曰く、『介護用パンツ』。・・・その穿かせ方、アタシが教えたわけじゃないから。念のため。」
「・・・・・」
空いた口が塞がらず、吸いかけのタバコが床へと落ちた。
足元からゆらりと紫煙が昇ってくるのをアスマは慌ててスリッパで踏みつける。

   オレが用意した勝負パンツじゃねーか。
   どう間違えたらこんな向きに穿かせられるんだよ?
   イルカの奴、ありゃー絶対ブリーフしか穿いたことないな・・・
   しかも色は絶対白だッ

「鉗子。」
「だから、持ってねえって。」
「じゃ、割り箸。」
「・・・」
気を取り直す暇も無く、アスマは割り箸で挟まれたアレを想像した。

   普段はふにゃってるアレを割り箸で挟んだところでな・・・
   ふにゃってるモノはふにゃってるんだよ。
   上を向かせたいなら別に方法があんだろ?

まさかそんなBジョークも言えず、アスマは頭を抱えた。
当然ながら自分の女が他の男のアレを触るなど・・あまり気分の良いものではない。
例え病人相手でも、だ。
こうなったら早く終わらすことが先決だと思われた。
どうせ避けて通れないのだから・・・と割り切ったアスマが諦めて投げやりに言い放つ。
「わかったよ、俺が持っててやる。お前の好きな角度でな。」
「あ、じゃぁその前にチューブ取ってよ。」
「・・・どこにあんだ?」
「そこの袋の中。」
紅が顎で指し示す先には・・・いわゆるスーパーの袋があった。

   『ホームセンター・木の葉』
   ・・・オイオイ。

「医療用じゃなくていいのか?」
「いいでしょ、大差ないわよ。アタシは気にしない。」

   ・・・お前は気にしなくてもなぁ・・・。
   ってか、自分が嵌めてる手袋は医療用だろう?

声には出さず、ツッコミを入れる。
中からチューブとやらを取り出したアスマの額にいやな汗が浮かんだ。
極々細いそのチューブ。

   ・・・まさか。
   まさかとは思うけれど、このチューブの差し込み口って・・・

「マジでやる気かよ・・・」
唸るように声を絞り出したアスマは思わず身震いした。

「当たり前!」












「ね?どう??」

あまりの姿に男としては返答の仕様がない。
カカシのアレの先からはチューブが出ており床下へとのびていた。
心なしか萎縮したアレは『暴れん棒』の見る影も無くなってしまった。
それもそのはず。
先ほどまでの格闘はそのダメージに値する・・・。

「どう・・・って言われてもな・・・」
「何よ、文句あるの?」
「・・・ねえよ。」
「でしょ?最初からこうすればよかったのよ。わざわざ毎回尿瓶に突っ込まなくても・・・病院ではやってるらしいじゃない。」
「ホントか?!」
「失礼ね。やり方はちゃんと医療班の友達に聞いてきたのよ?」
「・・・」

   指導を請ったのは本当か、疑問が残る光景だったぞ・・・

アスマが両手で支え持ったカカシのアレの先っぽにチューブを捻じ込もうとして、失敗。
失敗。
・・・更に、失敗。
その度に跳ね上がるカカシの身体は当然の反応で、決して大げさとは言えなかった。
同じ男として見ているだけのアスマのアレも縮み上がったぐらいなのだから。

   途中からわざと失敗してるのかと思ったもんなぁ

アスマがそう思うほどチューブはなかなか入らず、紅は四苦八苦しながらやっとのことで捻じ込んだのだ。
「アンタもカカシみたいになったら、ちゃんとアタシがチューブを入れてあげるからご心配なくvvv今回でコツも掴めたし。」
アスマの疑問も何処へやら・・・任しておいて、と紅は艶やかに微笑んだ。

   断る。
   それだけは勘弁してくれ・・・
   オレは何があろうとも意識だけは絶対に手離なさないぞッ

アスマは紅の言葉を苦虫を噛み潰したような顔で受け流した。
あえて言葉にはしない。
それが世渡り上手というものだ。
「あぁホント、サクラちゃんが来る前に終わって良かったわ。さすがにコレは見せられないものね。」
視線をカカシへと戻し、そう言いながら紅は何事もなかったかのように掛け布団で全てを覆い隠す。
隠せばいいってものでもないが、そのままよりは随分マシだろう。

「あら、ヤダ!カカシったら泣いてるの?!」
カカシの目尻に堪った涙に気付き、紅が笑った。





チューブから床の上の尿瓶へと、今、アスマの目の前で一滴の黄色い雫が滴り落ちる。
血が混じっているように見えるのは、断じて、気のせいなんかじゃ・・ない・・・・・・。










5代目火影、綱手様が木の葉の里へ入るまでの残りの日々、カカシからそのチューブが外されることは一度も無かったという。


















終了。
てか、終了してイイデスカ?
根性のないワタシを許してください・・・(死)
アレにチューブを突っ込むっていうネタを書きたかっただけなんです。(←正直者・笑)

あまり長い文章って書き慣れなくて。
頑張ったんですけど、れおさんのに比べて随分と短いものに。
ま、いいか。(自己完結。)
思ったよりオチませんでしたが・・・送らせて頂きます。


まゆ