メランコリー 「よし、出来た!」 ナルトは出来上がったばかりの着ぐるみを掲げて満足そうに微笑んだ。 赤、青、黄と色違いのソレは全部で三体ある。 多分…てんとう虫に見えるはず。 明日の結婚式の余興にこれを着て歌って踊るつもりだ。 「にしし。主役はいただきだってばよ」 「それはどうかしらね?」 独り言に返事が返ってきた。 ナルトが慌てて声のした窓の方を見ると、そこには腕を組んだサクラが仁王立ちで立っている。 「サ…サクラちゃん!どうしたの?こんな時間に」 ナルトは咄嗟に手を広げて着ぐるみを隠そうとしたが…所詮、無理なものは無理なのだ。 慌てふためくナルトをよそに、サクラは窓枠に足をかけるとそのまま部屋に入ってきた。 腰に手を当てて着ぐるみを眺め…大袈裟な溜息を吐く。 「まさかと思うけど『てんとう虫のサンバ』?」 「い、いや…これは、ちょっと……」 「却下します!」 …だから内緒で準備してたのに。 ナルトががっくりと肩を落とした。 その様子を見てケラケラ笑うサクラはどことなく元気が無い。 「何かあった?」 真面目な口調で訊ねれば、少しだけ驚いた顔でサクラは首を横に振った。 「何も無いわよ」 「でも…こんな時間に」 深夜と呼ぶには早すぎるが、気軽に友人を訪問する時間ではない。 心配そうに呟くナルトの瞳に影が差すのを見て、サクラは慌てて言い直した。 「独身最後の夜を満喫しようと思っただけだってば」 「…そっか。それならいいけどさ」 「てことで、今日は久々に此処に泊まるからよろしくねー」 「えぇ?!」 大袈裟に仰け反ったナルトを相手に何か文句があるのかとサクラが詰め寄る。 文句なんて、あるわけない。 彼女の残り少ない自由時間を過ごす相手に…自分は選ばれたのだから。 『オレ達』のサクラちゃんは明日たった一人の男のためのサクラちゃんになる。 それがどういうことなのか、ナルトは今更ながら噛みしめていた。 例えば…今日のようにサクラがふらりとやってきて、時間を忘れて話し込むなんてことはきっともう一生無いのだ。 「ナルト…寝ちゃった?」 少し上のほうからサクラの声が聞こえた。 おやすみを言い合ってからかなりの時間が経った筈だが…サクラも眠れないでいたらしい。 「起きてる」 そう答えれば、ぎしりとベッドを軋ませてサクラが顔を覗かせた。 床に薄い布団を敷いて寝転んでいたナルトからはその表情までは読み取れない。 上体を起こせば月明かりに青白く浮かび上がるサクラを捉えることが出来た。 「ねぇ…私、幸せになれるかな?」 「なれるに決まってるってば」 気休めなどではなく、そう信じている。 そうでなければ自分は身を引いたりしなかった。 「大丈夫。…大丈夫だよ」 ナルトの言葉に安堵の笑みを浮かべたサクラは再びもそもそと布団に潜り込んだ。 そして、ナルトに背を向けて手だけを差し伸べる。 「眠るまで握ってて」 「…うん」 少し冷たい小さなそれをそっと包み込んで、ナルトは何度も瞬きを繰り返した。 僅かに滲む涙を消し去るために。 「おはよう、ナルト!」 元気な声が部屋に響く。 「ほら、起きて!私もう帰らなきゃいけないんだから」 「…ん…サクラちゃん?」 「はーやーくー」 頬を両手で左右に引っ張られてナルトは目を覚ました。 ベッドに背を預けた状態で寝ていたらしく、体中がギシギシと痛い。 寝ぼけ眼を擦っているとふわりいい匂いが漂ってきた。 「朝ごはん作っといたからちゃんと食べるのよ?」 「うん。ありがと」 視線を合わせてお礼を言うと、昨夜のことを思い出したのか…サクラは照れたように微笑んだ。 「時間が無いからもう行くね。花嫁は色々と準備が大変なのよ」 「化けなきゃいけないし?…って、ウソウソ!サクラちゃんはそのままで十分可愛い!」 サクラが無言で指をポキポキ鳴らすのを見て、ナルトは慌てて言い繕う。 「当たり前。あ、それから…アレ」 着ぐるみを、ちらりと横目で見てからナルトに向き直る。 肩を竦めて呆れた笑いを滲ませるサクラはすっかりいつものサクラだった。 「誰とやるの?」 「…シカマルとキバ」 「よく二人がOKしたわね」 そんなの、無理やりに決まっている。 お互いにひとしきり笑いあった後、サクラは一人玄関に向かった。 ドアノブに手をかけて押し開く。 淡い朝日と共に、花の香りのする風が部屋を駆け抜けていった。 「楽しみにしてるわ」 振り向いたサクラがそう告げる。 「任せとけってば!」 「…じゃあね、ナルト」 「うん。ばいばい、サクラちゃん」 「ばいばい」 いつもとは違うさよならの挨拶。 自分も…サクラちゃんもよくわかってる。 静かに閉じたドア。 一人残された部屋の中。 ナルトは大きく息を吸い込んでゆっくりと立ち上がった。 ナルト語り? サクラの相手はご自由に。まぁ…カカシかサスケで。 あえて断定できないように書いてみました。 もにさんの描くナルトがこんなイメージなんですよね←勝手でスミマセン、もにさん… 2007.03.30 まゆ 2008.11.16 改訂 まゆ |