神様は見てるだけ




願いは叶うと誰が決めたんだ?
笑っちまうってばよ!

神様が言ったのか?
たとえそうだとしてもオレは信じない。

願いは自分で叶えるもの。
他人をアテにしてどうする?

要するに必要なモンは祈りじゃなくてさ。
気合と努力と根性!

…オレはそうやって火影になったんだから。










「サクラちゃん!おはよう」

いつもの朝。
同じ時間。
サクラが郵便受けに新聞を取りに顔を出すと、これまた変わらぬタイミングでナルトが通りを駆けてくるのが見えた。
上下のラフなスウェットは汗を含み、その鍛えられた身体にぴたりと張り付いている。
すでに何キロも走りこんでいる証拠だ。
まだ早い朝の澄んだ空気が心地よく、大きな伸びをしながらサクラもナルトに挨拶を返した。

「おはよ。毎日精が出るわね!」
「サクラちゃんこそ…まだ飽きないの?カカシ先生の世話」

ぷっと軽く吹き出したサクラの首に不自然に絡みついた腕を無視して、ナルトが言葉を続ける。

「大好きだよ、サクラちゃん!カカシ先生に愛想尽かしたらいつでもオレんとこ来てくれていいからね!」
「はは。ありがと」

至ってまじめな顔で告げられるが、サクラはさらりと慣れた調子で礼を述べた。
幾つになっても告白は嬉しいもの。
たとえそれが挨拶代わりに毎日繰り返されるものだとしても、だ。

「ウチの嫁にちょっかい出さないでくれる?」

サクラの背中に張り付くようにして身を潜めていた(つもりの)カカシが絶えかねたように口を挟んだ。
のっそりとピンクの髪の隙間から顔を出す。

「あ。カカシ先生、居たの?」

…わざとらしいぞ、ナルト。

「お前ねぇ…居たの?じゃないよ、本当に。毎朝毎朝性懲りもなくオレのサクラにちょっかい出しやがって」
「ちょっかいじゃないよ。本気だし」
「なお悪いわッ!!この期に及んでまだ横恋慕する気か?!いい加減現実を見ろって」

カカシはサクラの手を取り、ナルトの目線へと掲げた。
そこにはシンプルなプラチナの指輪が納まっている。
サクラとカカシは2ヶ月前に結婚していた。

「サクラはオレの嫁さんデショ!」

勝ち誇って声高々に叫ぶカカシを見た後、ナルトはサクラの指に輝く指輪を一瞥した。
しかし、気にすることは何もないとばかりにサクラと視線を合わせてにっこり笑う。

「じゃ、また後でね。サクラちゃん!」
「うん」

カカシを完全に無視した状態で別れの挨拶がなされ、来た時同様、ナルトは軽快な走りで遠ざかっていく。
サクラはその背中に軽く手を振ってからカカシの方へと向き直った。

「先生もいい加減にして。どうしてそうナルトに突っかかるのよ?あんなの、挨拶みたいなモンでしようが」
「……後で?」
「は?」
「後でって…どういう意味?」

カカシの右の眉がぴくりと上がる。

「今日は会議があるって言ったじゃない」
「…知らない」
「私はちゃんと言ったわよ?…また聞いてなかったのねッ!」

サクラが人差し指を突きつけ、イライラと怒鳴る。
現在、情報処理班に在籍するサクラは任務で里外に出ることは滅多にないが、そのかわり上層部の人間と連日のように会議に追われていた。
そこには当然火影であるナルトも顔を出す。
カカシはあからさまに不機嫌な顔になった。

(サクラが泣くから)結婚式にも招待してやっただろ?
なのに何でアイツは諦めてないんだよ?!
サクラを手に入れたのに、まだ安心できないなんて…
かくなる上は…子供だ!
子供を作るぞッッ
   
「行かせない」
「朝っぱらから馬鹿なこと言ってないで…ほら、ご飯にしましょう」

サクラはカカシの機嫌を取るようにその逞しい腕に両腕を絡み付け、玄関へと誘う。
半ば強引に引きずられながらカカシが声を発した。

「サクラ」
「なぁに?」
「ナルトを見習って…オレも運動をする」
「…」

怪しげな雰囲気にサクラが身を強張らせる。
『運動』と言っても…多分、まともな意味にとってはいけない。
サクラは経験上そのことを良く理解していた。
ゆっくりと、カカシを見上げる。
案の定、瞳が合った途端カカシはフフンと笑い、眠たげな瞳がすぅっと細くなった。
慌てて腕を解き離れようとしたが、時すでに遅し。
抗議の間も無く、サクラはカカシに抱え上げられて玄関をくぐる。
向かう先はリビングではなく…もちろん寝室だ。

…やっぱり。
先生の『運動』はアレしかないのかしら?

カカシの腕の中で身を捩りながらサクラは抵抗を試みる。
無駄なことだということは理解しているけれど。

「…ねぇ、昨日も3回シタでしょう?」
「足りない足りない」
「何回すれば気が済むのよッ?!」
「いっぱい」

寝室のドアがバタンと大きな音を立てて閉められ、後にはサクラの悲鳴だけが残った。

「先生の色魔ーッッ!!」










幸せそうだな、って思う。

でも諦めたらそこで終わりなんだよね。
…サクラちゃんには悪いけどさ。

火影になった今。
オレが一番望むものはサクラちゃんなんだってば。

神様はやっぱり見てるだけだし…
だから。
サクラちゃんが欲しければ自分で頑張るしかないよ!



いつもの朝。
同じ時間。

サクラちゃんに、告白。










ナルト→カカサク(笑)
初めて書いたよ、ナルト語り…
サクラちゃんラブなんだが、相手にされてないカンジがナルトなんだよね…不憫な。
そうだな…
サクラちゃん16歳ぐらいで。

2004.08.12
まゆ


2008.11.27 改訂
まゆ