present はぁーっと両手に息を吹きかける。 今にも雪が降りそうな雲行きだ。 サクラは低い空を見上げ、寒さに身を振るわせた。 まぁね。 時間通りに来てくれる相手では無いけれど? 下手な言い訳すらも愛しい。 飄々としていて掴み所の無い、猫背の私の王子様。 でも、早く来てね? 凍えちゃいそうよ。 何処からか流れてくるクリスマスソングに耳を傾けながら、サクラはそっと瞳を閉じた。 不意に触れる冷たい感触。 しかし、閉じられた唇を割って入るモノは熱くしなやかにサクラを絡め取る。 「んっ…」 軽く吸い上げられるだけで腰にまで響いた。 触れて欲しいトコロが熱をもつ。 もっと先の快感を望んでいる自分に、自己嫌悪にも似た感情が芽生えた。 両手で突っ張ってみるがそんな些細な抵抗で離れてくれる相手ではない。 「っ…もう、いきなり何するの!」 たっぷりと五分は蹂躙された後、サクラは大きく息を吸ってカカシを睨みつけた。 こんな街のど真ん中で…やって良いコトと悪いコトがある。 サクラは周りの興味津々な視線を振り切るように大きく一歩を踏み出した。 軽く肩をすくめてカカシも後を追う。 「いいデショ?サクラだってノリノリだったくせに」 「!!」 「ね?」 「…馬鹿ッッ!もう知らない!!」 図星を指されたためか、背けた顔は赤い。 カカシはそんなサクラの反応に微笑みながら、おもむろに右手をポケットに突っ込むと中からごく小さな何かを取り出した。 サクラの腕を掴み自分の目の前まで掲げると、間違えないように確認して薬指にそれをくぐらせる。 透明度の高い緑色の石は薄暗い街頭の明かりにさえキラキラと輝き…サクラは足を止めて、暫く呆然と自分の左手に納まったモノを眺めていた。 「…サクラ、口が開いたままなんだけど」 カカシの声にサクラがのろのろと顔を上げる。 何度か声を出しかけて…でも結局何もいわないまま、最後に指輪へと視線を戻した。 予想外の出来事にかなり動揺しているらしい。 「私に?」 ポツリとサクラが問う。 当たり前すぎる質問に、カカシは苦笑するしかなかった。 答えの代わりに腰を折り俯いたままのサクラを覗き込んで、その額にキスをする。 やっと輝かんばかりの笑顔を取り戻し、お礼を告げたサクラは腕に引っ掛けていた鞄を慌てて探った。 「私もプレゼントがあるの!」 ハイと差し出されたのは、初めて見る物ではなかった。 いつだったか…これとほぼ同じ物を一度貰ったことがある。 「これって…」 「ん。医療パックだよー。ちゃんと改良してあるんだ!先生専用なの!!…持ってなかったよねぇ?」 「…」 …リン、だ。 貰ったものはどうしたっけ? 確か、戦闘中に…… 「先生?」 てっきり喜んでもらえるとばかり思っていたサクラはカカシの様子に戸惑っていた。 訝しげに眉を寄せ、瞳を曇らせる。 「…もしかして、必要なかった…とか?」 トーンの落ちた声はカカシを現実へと引き戻した。 「いや、そんなこと無いよ。有難う」 「…ホントに?」 「うん。大事に使わせてもらう」 にっこり笑えばカカシの手に収まっている医療パックについてサクラが得意げに説明を始めた。 「ホラ、ココ見て!こうやるとね、片手でも簡単に取り出せるの。スゴイでしょう?」 やっぱり、似てるんだよね… サクラに惹かれた理由のひとつに多分リンのことがあるのだと、そう思う。 恋なんて…そんな気持ちは邪魔なだけだと粋がっていたあの頃の自分。 いつだってリンは側に居てくれたのに。 その大切さに気付く前に失くしてしまった。 本当に馬鹿だったよ。 「早く先生の家へ帰ろう」 一通りの説明を終えて満足したのか、サクラがカカシの手を引いた。 「そーだね」 「ケーキを買って帰るのを忘れないで!」 「わかってマス」 先を歩き始めたサクラに、リンの姿が重なった。 異国の神様が生まれた聖なる夜。 今宵は奇跡が起こるのだと誰かに聞いたことがある。 そにしても、医療パックがプレゼントなんて… 案外、リンのヤツが乗り移ってたりしてな。 「リン?」 小さな背中に、悪戯交じりに呼びかける。 数歩先を歩いていたサクラの足がぴたりと止まった。 「…イイ度胸じゃない、カカシ先生。私に違う女の名前を呼ぶなんてッ!」 「あ…いや、奇跡が起こるかと…」 「奇跡って、何!!てか、リンって誰よ?!」 「聞きたい?」 ぐっと息を詰まらせるサクラを抱き上げてカカシが笑った。 「話せば長くなるんだよー。だから今日は泊まりなよ。ね?サクラ…」 時を積み重ねることこそ奇跡の連続なのかもしれない。 全てを無くしたハズなのに、気が付けば自分はまた…沢山の大切なものに囲まれて生きているのだから。 カカシは胸で暴れている今一番大切なものがこぼれてしまわないように、しっかりと抱えなおした。 実は24日にUPしようと思ってました…。 クリスマスは忙しかったのよ。スマン。 てことで、今更ですが…メリクリ! 2004.12.26 まゆ 2008.11.30 改訂 まゆ |