innocent love 2




「サクラ…コレじゃ、何も出来ないって」

さほど広くないカカシのベッドの上で、サクラは薄い上布団をぐるぐると巻き付けたまま座り込んでいる。
これでは裸に剥いた意味がない。

「だってぇー。先生に裸見られるの恥ずかしいもん」

うわー…
サクラ、可愛すぎ!

「だ、大丈夫だって!電気消すし。ほら、カーテンも引くからッッ!」

真っ裸のまま部屋を駆けずり回りカーテンを引く姿はかなり滑稽なものだ。
それでも今のカカシにはそんなことを考えてる余裕はない。
最後に電気を消し、ベッドへ戻るといそいそとサクラを押し倒した。

軽く触れるキスから徐々に深いものへ。
その頃にはすっかりサクラの身体の力も抜けていた。
時折耳をくすぐる甘い声がカカシを煽る。
カカシは丹念に指で慣らしていたソコへ自身の固くなったものを押し当てた。

「せんせぇ……」
「ん?」
「ちょっと…かなり痛い、かも」

入れるの、早かったか?

「…ゴメン。ゆっくり入れるから…チカラ抜いて」
「う、ん。痛ッ!」

…おかしいな。
これでもいつもより優しくヤッてるつもりなんだけど……

サクラはというとギュッと瞳を閉じたまま、眉間にシワを刻み込んでいる。
カカシを見る余裕さえないらしい。
腰を進めるたびにカカシの背中に回されている、サクラの爪がじわりと食い込んだ。

オレも痛ぇ。

「一回抜くから」
「や。私、頑張る!」

…頑張ってまでするモンじゃないから。
ていうか、そんなに我慢されても…ねぇ?
オレも鬼畜じゃないんだし。

「サクラ…今日はヤメとこう。な?」

涙を呑んでカカシが呟いた。

「ごめんね、先生。私…あんなに痛いと思わなくて…」

ま、しょうがないデショ。

「なんで謝るのさ。サクラのせいじゃないよ。それにすごく可愛かったし。喘ぎ声」

薄紅色の髪を梳きながらそう告げるとサクラは頭まですっぽりと布団を被ってしまった。

「わッッ!やめてよ…そんなこというのッッ!」
「マジで可愛かったって」

カカシはサクラをあっさりと布団から引きずり出して、その耳元に囁く。

「もう言わないでよぉ…」
「続きはまた今度、ね?」

真っ赤になって俯きながらも、サクラはコクンと頷いた。










「馬鹿ね、最初から感じまくる処女なんていないわよ。…で、どうしたの?」

昼下がりのカフェでカカシはアヤノと逢っていた。
ベッドの中ではないので罪悪感はないらしい。
もとよりアヤノはカカシにとって姉に近い存在なのだから。
昨日の出来事…サクラとの初体験を語って聞かせていた。

「サクラを家まで送った後、一人でヌイたよ。先っぽに付いたティッシュを除けるあの虚しさ…」
「ははは!カカシ最高ッ!!」
「笑わないでよ、アヤノさん」
「笑わないでって言われてもねー」

カカシの目の前で、アヤノはまだ笑い転げている。
ふてくされたカカシはもうすっかり冷めてしまったコーヒーに口を付けた。

「しかし、オレのテクをもってしても処女はイカせられないのか…」
「はぁ?処女に限らず、でしょうが!」
「い、今なんて言った?」

なんだか凄いことを言われた気が…

「アタシ、カカシのテクでイッたことなんてないわよ?」
「…って、アヤノさんってばいつも大きな声でよがってたデショ?」
「あは!アレは演技よ、演技!気分を盛り上げなくちゃ楽しくないじゃない」

マ、マジですか?!

「とにかく。カカシは本気で好きなのよね?そのサクラって女のこと。だったら頑張るしかないじゃない」

カカシが自失している姿をよそに、アヤノは冷たいフレーバーティーのグラスを傾ける。
最後の一滴まで飲み干してから軽やかに席を立ち、固まったままのカカシの額を引き寄せキスをした。

「ご馳走様!じゃ、またね」





「オイ!さっきの美人、誰だ?」

アヤノと入れ違いにカカシの前に見慣れたヒゲ面が現れた。

「アスマか。誰でもいいだろ、別に。・・・何の用?」
「まぁ、用ってほどのモンじゃねーけどな。こんな所で茶してるぐらいなんだからお前暇なんだろ?たまにはオレの武勇伝も聞けよ」

女の所から朝帰り風のアスマは妙にご機嫌だ。

「や。今はそんな気分じゃないの」
「いいから聞けや」

それから昨夜の飲み会の様子から事細かに話し始めたアスマをカカシは全く相手にしなかったのだが、最後の言葉だけは聞き流すことが出来なかった。

「…とまぁ、イカせまくりよ」

イカせまくりだぁ?

カカシから冷気が漂い始める。

「で?」
「抜かずの3連発」

そう誇らしげに告げた後、カカシを取り巻く空気がすっかり冷たくなっていることにアスマはやっと気が付いた。
どうも自分は地雷を踏んでしまったらしい。
何が地雷だったのか…全く見当もつかないけれど。

「あ、いや…重要なのは打った回数よりイカせた回数だよな!はは…」

必死に笑って誤魔化すも、逆にカカシの冷ややかな群青の瞳には更に殺気がこもった、ような気がする。

「違うな、やっぱ愛…愛だよ!愛があればイカせられないヘタクソでも…ゴフッッ」

カカシの右肘がアスマのわき腹に食い込んだ。

どうせオレはサクラをイカせられなかったよッッ!
おまけにアヤノさんまでイッてなかったって言うし…

「お前が『愛』とか言うなって。似合わないデショ!」

フラフラと立ち去る背中は誰がどう見てもいつものカカシじゃない。
カカシの…いわれのない棄て台詞に、アスマはわき腹を押さえながら首を捻った。

「何があったんだ、カカシのヤツ…?」















じゃ、なにか?
今までオレと寝た女は全員感じたフリをしてたのかよ…
イカせたと思っていたのはオレだけなのかー?!



「ねぇ、先生」

自分が呼びかけて、カカシが気が付かなかったことなんて…一度もなかった。
一度もなかったのに。

「ねえってば!!」

サクラはむきになってカカシの袖を引いた。

「…あ、何?」
「先生、どうしたの?大丈夫?」
「は?」

愛しいサクラと二人で歩いてても、アヤノの言葉がカカシの頭を離れない。

「身体、どこか悪いんじゃないの?」
「サークラ、優しー!」
「馬鹿!茶化さないで」
「じゃ、さ。サクラが調べてよ。オレの身体の隅から隅まで…」
「やだ!先生のえっち!!」

「この間の続きをしよう。ね?サクラ…」










「気持ち…良く、ない?」

「…ごめんなさい」

謝らないでくれよ。
なんか、すごく虚しくなってきた…

「サクラ…オレのことどう思ってる?」
「え?」
「…オレってただの処女を棄てるためだけの相手だったりして」

もうこれで三度目のトライ。
前戯では僅かに濡れるものの本番では相変わらずサクラは痛がるだけで進歩がない。
アヤノの言葉も相まってカカシはどうしようもなくイライラとしていた。

「なんでそんなこと言うの?…先生、やっぱり処女は面倒くさいって思ってたんだ!」
「違うッ!」

こんなこと、言いたいんじゃないのに!

「私は…私は『初めて』は好きな人とって決めてたものッッ!だから先生と出来るのが嬉しかったのに…」
「サクラ…」
「好きじゃないのは先生の方でしょう?本当に私のこと好きなの?」

落ち込んで。
焦って。
挙句の果ては、八つ当たり。
一番大事な人を傷つけるなんて…オレって最低。

返事が返せずにいるカカシを置き去りに、手早く着替えを済ませたサクラは黙って部屋を出て行った。





サクラの好きなモノ
嫌いなモノ

笑った顔
怒った顔
…恋してる顔

サクラはいつもどんな顔でオレを見てた?

サクラのことを知っているようで何も知らないという事実にカカシは今やっと気が付いた。

処女が面倒くさいとか
イカせたいとか
そんなものは、ただの男のご都合主義のプライド。

セックスだけで女のコトをわかったつもりでいたけれど…そんなものは上辺だけの安っぽい愛だ。
ホントの愛じゃない。

服を引っ掛けるようにして急いで部屋を飛び出す。
今ならまだ近くに居るはずだ。
カカシは全神経を集中してサクラを探した。





「サクラ!!」

カカシの碧眼が走って逃げるサクラの後姿を捉える。
一気に加速すると華奢な小さな身体は簡単に腕の中へ閉じ込めることが出来た。

「オレが悪かった!ごめん。ごめんなさい!」

後ろから抱きしめて、謝罪の言葉を繰り返す。

「それから…オレのコトを好きになってくれて有難う。オレもサクラのこと大好きだよ…」

サクラは涙を拭ってゆっくりと振り返り…そして、何も言わずカカシを抱きしめた。



セックスは愛じゃない。
愛を確かめあう手段ではあるけれど。

カッコ悪くても
情けなくても
サクラが好きになってくれたオレ。

サクラの前では虚勢を張る必要は無いんだ。
ありのままのオレでいよう。



サクラは今、どんな顔でオレを見てる?

オレは今、どんな顔でサクラを見てる?


どんな顔で、恋してる?














いないと思われた続きを求める人が…いましたね。(爆)
正直なところ、3人いれば書こうと思ってました。
ゆんさん、れっつさん、吉川さん…フ。ちょうど3人ですね。
つうことで、書きましたよ。
お三方に捧げます。
なんだか真面目くさったシメになりましたが…まぁ、いいでしょう。
そんなことより話の流れに違和感がないことを祈るばかりですー。

それにしても…さすが連休はちがう!!
書く気になれば即日UP出来ますもん。
普段もこのくらい時間の余裕があればねぇ?
バリバリ更新できるものを…(苦)

サブタイトル
『テク無しカカシ、悩む』…爆

2004.05.04
まゆ


2009.06.14 改訂
まゆ