君の存在が世界を変える




「もしサクラがずっとオレの傍に居てくれるなら…何だってしてあげるんだけどねぇ」

頭の上から降ってきた呟きに、サクラは動きを止めた。
いつものように子供のお使いのような任務を終わらせお開きになった直後のことだった。
あまりにも脈絡の無さすぎるカカシの言葉。
しかも、その謎めいた言葉は聞き様によって愛の告白と取れなくもない。
帰宅するために踏み出した次の足が宙に浮いたままなのにも気付かず固まったサクラの視界の片隅で、ナルトと…サスケまでもが振り返りカカシを見つめていた。

「何なのよ、お前達。オレ…そんなに変なこと言ったか?」

内心ヤバイと焦りながら、カカシは三人の顔を見渡して照れくさそうに頭に手をやった。が、…誰一人として反応を返す者はいない。

気まずい沈黙が流れる。
時間にして…一分少々。

それに耐え切れなくなったのは、その場に居る四人のうち一番動揺しているらしいサクラだった。
赤い顔でカカシを見上げ、掠れた声で抗議する。

「あの…意味わかんないこと言うの止めてもらえます?」
「だよねー。わかんないよねぇ。いいの、いいの。気にしないで?はい、さよーなら」

サクラによって場の空気が動いたことに乗じたカカシは、ひらひらと手を振り何事もなかったように歩き出す。
その態度にはサクラはもとより、ナルトとサスケの両名も唖然となった。

「言い逃げだってばよぅ…」
「…だな」

思わず顔を見合わせた二人だったが、だからといってつるむ気は無い。
互いに牽制しつつ…サクラをカカシの魔の手から守るためサクラに近寄ろうとしたその時、サクラが不意に大声で叫んだ。

「ちょっと待たんかい!しゃーんなろーッッ!」

先ほどとは打って変わった言動に、思わずカカシが振り返る。

「サ…サクラ……?」
「私のことが好きなら好きってはっきり言えばいいじゃない!好きなんでしょ、私のこと!そういうことよね?」

詰め寄られ、捲くし立てられてはカカシも逃げようがない。

「あ、うん。まぁ…そうなるかな」
「何で?」
「何でって…」

サクラがオレの傍で笑っていてくれるなら…
こんな自分でも幸せになれそうな気がするからだなんて、そんなこと…恥ずかしくて言えないでしょーよ。
14コも離れた『女の子』にさー…

いつもと違い上手くかわす言葉が見つからず、カカシは夕焼けに染まる空を仰ぎ見た。
その空以上に赤い顔のサクラもまた、カカシの服の裾を握ったまま微動だにしない。

予想外の展開に冷静さを失っている彼が、彼女もまんざらではないのだと気付くまでに掛かる時間は………






声に出すつもりはなかった、サクラへの気持ち。

サクラの存在がオレの世界を変えるんだ…













リサ様に捧げます。

頂いたMDのお礼に何か…と思ったんですが、こんなのですみません。
仰っていた曲のイメージではもっと大人な感じのカカシなんですけど…所詮私は『黒カカシ』&『ヘタレカカシ』書きでした…

2006.06.11
まゆ



2008.11.30 改訂
まゆ