I’m dreaming




「なんで来たのさ?」

もう来ないと思っていた少女の訪問は少なからずカカシを驚かせた。
何事もなかったかのように立ち振る舞う彼女の全てが胸に刺さる。

「頼むから、自分の気持ちを優先してよ」

サクラが此処に…カカシの自宅に居る理由を、カカシは見出すことが出来なかった。
ほんの数時間前に見た、抱き合う二人の姿が目に焼きついて離れない。

ずっと側に居れば何とかなるって思っていたオレは本当に馬鹿だ。
…サクラがあんなに惚れていたサスケを忘れるはずないのに。

包み込むようにサスケの背中に回されていたサクラの腕が今は自分を抱いている。
その違和感にカカシは自虐的に笑った。

「やっぱり、さ。サクラの一番はサスケだろう?」

カカシに擦り寄る小さな身体が僅かに震えた。
剥き出しの肩を隠すように布団を引き上げ掛けてやる。

「でもね。それはサクラのせいなんかじゃないし」

責めている訳ではないのだと安心させるようにカカシは薄紅色の頭をゆっくりと撫でた。
しかし相変わらずサクラは一言も声を発しはしない。
カカシはひとり、言葉を続けた。

「オレがもし別れ際に泣いても憐れむなよ?死にそうでも振り返らないで。オレはきっと…大丈夫だから」

サクラが出て行き、独りになって。
その瞬間からすぐにでも自分はサクラに会いたくなるのだろう。
瞳に映る世界の端々まで探すに違いない。
…それでも。

「サクラに嘘を吐かせるなんてしたくないの」

だから此処へはもう来なくていい、と。
サクラの好きにすればいいよと本当は言ってあげたいのに。
カカシは自分を見捨てられずにいるサクラの優しさに甘えて…彼女の気持ちに気付かないふりをしている。

ズルイよなぁ…

ころんとサクラが寝返りを打った。
自分から離れていく錯覚に囚われて、カカシは暗闇の中、慌ててサクラを引き寄せる。

いつになれば自分はサクラに別れの言葉を告げられるのかな。

カカシは今はまだ閉じられたままのサクラの目元へ唇を落とし、自らも瞳を閉じた。



腕にある確かな温もりをキツク抱いて。










サスケが木の葉の里へ戻ってきた。
再び動き始めた時間に身を置くサクラと、まだ自分に都合の良い夢の中のオレ。
お願いだからもう少しだけこのままで……

浅い夢を見させてください。











サスケが戻ってきたらしい。…15?16???そんなトコ。
カカシ…頑張れ。
基本的にネ、私の中でカカサクはラブいものではなくてさ。カカシ一方的に惚れてんの。
原作のサクラのイメージは無理やり捻じ曲げたくないので、やはりサクラはサスケが好きで…その上に成り立つカカサクが書きたかったり。

2005.01.23
まゆ



2008.11.30 改訂
まゆ