謀 チクリと刺すような痛みに、サクラは足元を見た。 そこには親指ほどの丸っこい何かが蠢いている。 「きゃー!!」 虫だと理解した途端、叩き落としたが…勢い余って潰してしまったようだ。 手に付いた虫の体液を忍服に擦り付けるサクラのもとへ、ナルトとサスケ、そしてカカシの三人が走り寄る。 「どうしたんだってば、サクラちゃん!」 「や…ゴメン。変な虫が足に…」 「刺されたのか?」 「あ、うん。そうみたい」 よく見れば脹脛に赤い斑点が二つ。 わずかながら出血も見られる。 「見せてみろ」 男二人の頭を掻き分けるようにしてやってきたカカシは素早くイチャパラをポケットにねじ込み、サクラをその場に座らせた。 傷口を見るなり、険しい表情でポーチを開ける。 「…なんだよ?」 カカシのあまりにも真剣な様子にサスケが不安げに聞いた。 「毒虫だ」 「!!」 三人の顔が一瞬にして凍りつく。 「早く血を抜かないと!」 切羽詰ったカカシの声が事の重大さを物語っている。 カカシはベルトを引き抜くとサクラの太腿に回して止血を始めた。 もどかしそうに取り出した消毒液をクナイに振りかけ、呆然としたままのサクラへ一言声を掛ける。 「痛いよ?」 もちろん返事など期待していない。 カカシは片手でサクラの膝を押さえると、何の躊躇いもなくクナイを押し当てた。 1センチほど皮膚を裂き、口を寄せる。 そして口を離したかと思うと、地面へ吸い出した血を吐き捨てた。 「ナルト、そのバケツに水汲んで来い!少し先に川があるから」 「わ、わかったってばよッッ!」 「サスケは火をつけてくれ。急げッ!」 二人は指示通り瞬時に行動を起こした。 そうしている間にもサクラの脹脛はだんだんと紫に変色を始めている。 「せんせぇ…」 サクラの、涙交じりの声に傷口を見ていたカカシが顔を上げる。 「痛い?」 「ちょっとだけ。…私、死んじゃうの?」 「大丈夫だよ、サクラ。オレがいるからね」 安心させるように微笑んだカカシは、少しでも毒を出そうと再びサクラへ口を寄せた。 少し離れた場所で薪を集めていたサスケが二人様子を盗み見る。 カカシが行っているのは治療だというのに、なんだか落ち着かない。 それどころか怒りさえ湧いてくる。 サクラはオレの女だぞ! 潤んだ瞳でカカシを見つめているサクラにも腹が立った。 黙って足なんか触らしてんじゃねぇよ! サスケは集めた薪を持って二人のもとへと帰った。 イライラとした気持ちを発散させるかのように乱暴に薪を置き、火を付ける。 そして、執拗にサクラに吸い付くカカシの背中に声を掛けた。 「おい。火を付けたぞ。…どけよ、オレが代わる」 「駄目だ」 「何故?」 「…あのねぇ、サスケ。ヤキモチ焼いてる場合じゃないデショ。サクラは怪我をしてるんだよ?それに…これはオレじゃないと出来ない」 「だから、どうしてだと聞いている。やり方ならアカデミーで習った」 「そういう意味じゃない。お前、毒に対する知識は?抵抗力は?…ホラ、何にも知らないだろう?」 「…」 「この手の毒はヤバいんだよ。本当は吸い出したりしてはいけない。吸い出した本人にも毒が回るからね。でもその方が確実に毒を薄めることが出来るから…」 カカシの説明にサクラが弾かれた様に顔を上げた。 「先生!!もうやっちゃ、駄目!」 「心配してくれてるのー?サクラ、優しいねぇ」 「茶化さないで!」 「はは。先生はこれでも毒全般には免疫があるから、少量ならなんともないんだよ。これくらい平気!」 というわけで、お前には無理なの…とカカシはサスケを目で黙らせた。 歯噛みするサスケの目の前で再開された行為は、相手がカカシなだけにヤラシク見えてしょうがない。 悶々とした気持ちを持て余してサスケが軽く舌打ちした時、ナルトが水を汲んで戻ってきた。 「ナルト、貸せ」 カカシがナルトの手から小さなバケツを引ったくり、そっとサクラの脹脛へ水をかける。 「痛ッ!」 水が沁みたのか、サクラが身を捩った。 血が洗い流されたあとの傷口は相変わらず紫に変色していたが、先ほどよりは随分とマシに見える。 しかし、確実に毒はサクラの体内を巡っているはずだ。 「サクラ…どんな虫だったか覚えてる?」 「う…んと、赤くて…黒い斑点が、あった。親指くらいの、大きさで…潰しちゃった…ん…だけど、体液は…緑」 サクラの顔が薄紅色に上気している。 熱が出てきたようだ。 「斑点の数は?」 「…わから…ない。多分…左右に四個、ずつ。」 「四個?!…三なら心当たりがあるが、四となると…亜種かもしれない。…ナルト!スマンが今すぐ里へ帰ってこの虫のことを話して解毒剤を!」 「わかったってば!!」 「いいか、五代目の所と…油女の所へも行くんだ!」 駆け出す背中にカカシの声が追いすがる。 ナルトは一度振り向いて頷いた後、スピードを上げて里へと向かった。 「おい、サスケ。お前は虫を探せ。亜種の場合、里にも解毒剤は無い可能性がある…現物を捕まえて解毒剤を作るしかないからな。急げよ」 突っ立ったままのサスケに指示を出す。 サスケはカカシを通り越してサクラを見つめた。 「サクラ…どの辺に居た?」 「あそこ…の、草むらの、中…」 「わかった」 無視されたカカシはやれやれという風に肩をすくめ、自分がやらなければならないことに集中する。 サクラを抱えて火の元へ。 発刊作用を利用して少しでも毒を体外に出さなければならない。 「サクラ、ちょーっと熱いけど我慢してね」 サクラはカカシの声に力なく頷いた。 「先生!サスケくんがね、私と付き合ってくれるって!!」 嬉しそうに自分の家の扉を開けて入ってきたのは薄紅色の髪の少女。 カカシはその髪を撫でながら微笑んだ。 「そりゃ良かったな」 「うん!先生のおかげだよ」 「先生は何もしてませーん」 カカシがおどけたようにそう言うと、サクラはあの、エメラルドの瞳で真剣に彼を見上げた。 「違うよ。先生のおかげなの。先生が励ましてくれて…先生がアドバイスしてくれたから上手くいったんだよ」 「はいはい。じゃ、今度何かお礼でもしてもらおうかねぇ」 「もちろん!私に出来ることならなんでもするわ!」 「…お茶、飲んでいく?」 「ううん。これからサスケくんと待ち合わせなの」 「そーですか。…頑張れよ」 「へへへ」 別れの挨拶を交わし、玄関の扉を開けて少女が出て行く。 薄紅色の髪は少し傾いた太陽の光に染まり、赤く萌えて見えた。 私に出来ることなら、なんでも…か。 嬉しいこといってくれるねぇ。 ニヤリと笑うカカシの表情は、先ほどの『先生』のものではなかった。 閉まったままの玄関の扉を見つめながら、喉の奥で低く笑う。 全てはカカシの予定通りに運んでいた。 さて、これからだよ…サクラ… 「先生、先生!」 任務の帰り道、カカシはサクラに呼び止められた。 サクラがサスケと付き合うようになってからは初めてのことだ。 「何?」 「…う、ん。ちょっと相談したいことが…あるんだけど」 「何だよー、サスケの事?」 図星を指されたサクラは頬を染めて俯いた。 「喧嘩でもしたか?」 「違う!」 だろうな。 いつも見てるがそんな素振りはないし。 …てことは。 面布の下でほくそえみながら、カカシはサクラの言葉を待った。 「サスケくん、本当に私のことが好きで付き合ってくれてるのかなー…なんて…」 「当然デショ。サクラは何でそんなことを考えてるの?」 「…」 「サスケがキスしてくれないから?」 「せ、先生?!」 弾かれたように顔を上げたサクラは茹蛸のようだ。 真っ赤な顔でぱくぱく口を開けている。 可愛いねぇ。 カカシは声に出さずに呟くと再び同じ台詞を繰り返した。 「キス、されないから?」 冷やかす風もなく見下ろすカカシの瞳に、サクラの言葉が詰まる。 キスなんて、とんでもない。 手を繋ぐのだって自分からなのに。 「私が、えっちなのかな…?」 カカシの質問に肯定の意思を含んだサクラの問い。 上目遣いで見つめられ、カカシは手を出しそうになる自分を戒める。 まだ駄目だ。 もう少し…もう少し…… 「そんなことなーいよ。サスケのヤツ、意気地なしだなぁ」 いつものように頭へ手を載せて優しく撫でる。 「今度の休みに皆で釣りにでも行くか?いい場所知ってるんだ。アイツ、釣り好きだろ?それに…いつもと違うシチュエーションの方がそういう雰囲気になんじゃないかな?」 カカシの提案に、サクラは顔を輝かせた。 無邪気にカカシに抱きつきながら礼を述べる。 「有難う!先生、大好き!!」 「はいはい。じゃ、気をつけて帰れよ」 「はぁーい。またね、先生。明日は遅刻しないで」 「…努力します」 アカデミーの門の前で二人は別れた。 サクラは物足りなさを感じている。 サスケに、というよりは…男女の付き合いとして。 本来、女の子のほうがませているものだ。 機は、熟した。 「先生…ごめん、ね…」 上がり始めた熱のため、途切れ途切れのサクラの声にカカシは優しい笑みを返した。 「気にしない、気にしない。釣りなんていつでも出来るし!…そんなことより、解熱剤飲めるか?熱が高くなる前に飲んでおいた方がいいんだけど」 サクラを抱きかかえて座るカカシの傍らにはポーチの中身がぶちまけられていた。 何種類もある錠剤の中から黄色い粒を選び出し手に取るとサクラの口へとねじ込む。 顎に手を添えて水を飲ませるも…上手く薬を飲み込めない。 「…にが……」 口の中に残った薬が溶け出したのか、サクラはその形のよい眉を顰めた。 「…しょうがないな」 カカシは水を含むとサクラの唇を舌でこじ開けた。 水を送り込むと共に錠剤を喉の奥へと押しやる。 「…んッ!」 コクンと嚥下したのを確認して、カカシは口を離した。 背後からの殺気をものともせず、涼しげに尋ねる。 「いたか?サスケ」 「何、してんだよ!」 「何って…お前ねぇ」 心底呆れたような声でカカシは顔だけサスケへ向けた。 その隙間から、赤い顔のサクラが見える。 殺気を纏ったまま近づくサスケをカカシは一言で止めた。 「その虫をサクラに近づけるな」 はっとして立ち止まる。 自分はサクラを刺したと思われる毒虫を捕獲していた。 動けなくなったサスケにサクラの声が聞こえる。 「薬を、飲ませてくれた…だけよ」 何とも言えない…泣きそうに歪んだサスケの表情を、サクラが見ることはない。 カカシが、見させない。 笑い出したい気持ちを押さえ込み、虫を見やる。 サクラの言うとおり、左右に4こづづの黒い斑点。 今日のためにオレが何種類もの毒虫を交配させて作った亜種。 オレがサクラの足にのっけたんだよね、ソレ。 持ってきたのはたった2匹だけだというのに、サスケは早々に見つけてきたらしい。 そうでなくちゃ、困るのだけれども。 「サスケ…その毒虫、亜種だ。オレは初めて見る。多分・・里にもその解毒剤はないだろう。直ちにソイツを持って里へ向かうんだ」 毒を取り出すことが出来ても…設備がないと解毒剤を作れない。 カカシはサスケに命令を下した。 「サクラをつれて帰った方が早くないか?」 今から里へ帰って解毒剤を作り、此処まで戻ってくるとなると倍の時間がかかる。 それならばサクラも一緒に…と考えるのはやはり毒の性質を知らないサスケの意見だった。 「揺らすと毒が早く回る」 此処で安静にお前達のどちらかが戻ってくるのを待つことが一番安全な策なんだと、カカシが無言で訴える。 「カカシ、お前が行ったほうが早いだろ」 「…サクラの病状が急変したときに、お前が対処できるなら、ね」 サスケにとってそれは十分に脅し文句だった。 「サクラ、すぐに戻る」 サクラに一言声を掛けて、背を向ける。 踵を返して駆け出す前に、カカシへと届いたサスケの台詞は陳腐な恋愛ドラマの主人公のようで失笑を禁じえなかった。 「それ以上サクラに触るな。何かしたら殺してやる」 若いねぇ。 馬鹿か、お前。 しないわけ、ないデショ。 これはカカシが用意した舞台なのだから。 意識が朦朧としているサクラの服へと手を伸ばす。 ファスナーをおろす音に、サクラの瞳がわずかに開いた。 「汗を拭くだけだから」 『先生』の笑顔に安心して、サクラは身を委ねる。 現れた鎖帷子の下は何も着けていない。 引き千切りたくなる衝動を抑えて、手を潜らせた。 「つめ…た、い」 「気持ちいいだろ?」 ナルトが汲んできた水に浸した手ぬぐいで、サクラの身体を隅々まで拭いていく。 此処から里までは歩いて4、5時間の距離だ。 あいつ等が帰ってくるのは…解毒剤を作る時間を含めて、早くても約7時間後。 間に合わないよなぁ、やっぱり。 もう少し弱い毒にしとけば良かったかも。 カカシは片手をポケットに突っ込み、一粒の薬を取り出す。 紅い紅い錠剤。 見るからに毒々しいそれは、サクラが刺された虫の解毒剤だった。 「サクラ。もう一個、飲んで欲しい薬があるんだけど…」 自らの口に、水と薬を含み…息をするのも辛そうなサクラの唇をそっと奪う。 そして、口の端を伝う溢れた水を舌で拭い取った。 「ゴメンね、サクラ。これで楽になるよ」 「…どうし…て、先生が…謝る、の?」 「さぁ、どうしてかな」 曖昧に言葉を濁したカカシは、はだけたままのサクラの忍服を直そうともせず、わずかに膨らみかけた胸の上へと…手を置いた。 そんなことにまで気が回らないサクラの、掠れた声が続く。 「私の…ファー…スト、キス……先生になっちゃった、じゃ…ない」 「不本意?」 「ううん。先生は、私を…助けてくれて、るんだよ。だから…いいの」 「そりゃどうも」 「先生」 「何?」 「私、死んじゃ…う?」 「だーかーら、死なないって。オレがいるし」 カカシの言葉にサクラが微笑んだ。 女なら誰でも求める、守られているという安堵感。 「先生って、私を喜ばせるの、上手よね」 「そう?」 「それに…キスも、上手」 「くくく。あんなのキスの内にはいらないデショ」 カカシが可笑しそうに笑うのを見て、サクラは頬を膨らませた。 解毒剤が効いてきたのか…荒い息遣いも収まりつつある。 「でも、キスだもんッ!」 「…キスっていうのは、こういうヤツなの」 言の葉が乾かないうちに降りてきたカカシの唇は、ひんやりと冷たかった。 自分は一体どれほどの熱が出ているのだろうかと意味のないことを考えているうちに、カカシの舌が滑り込んでくる。 尖った舌先がサクラの歯列をなぞり、目的のモノを絡めとった。 軽く吸い上げるとサクラの口から甘い吐息が漏れる。 「ふっ…んッ…」 ゾクゾクとした。 カカシは唇を離すことなく、首筋へと移動し…鎖骨まで到達すると、ソコをキツク吸う。 「あ!」 カカシの忍服を掴むサクラの手が、カカシの背中へと回った。 それは理屈ではなく、女としての本能。 期待が交じり合う視線。 躊躇いないカカシの手は既に鎖帷子の下で蠢めいている。 胸の先端を、指の腹で押し付けるように擦った。 「あ…やぁ……んッ」 「気持ち、イイ?」 邪魔な鎖帷子を、たくし上げる。 初めて会ったときから手に入れたかった、白い身体。 まだ誰も触れていない真っ白な… 熟れた木苺のように紅いそれをカカシが口に含んだ時、サクラは辺りに響くほどの嬌声を上げた。 「あぁんッッ!」 白い壁。 白い天井。 消毒液の匂い。 気が付けば、其処は病院だった。 自分を見下ろす、幾つもの顔がある。 どういうわけか・・・サクラが真っ先に探したのはカカシの顔だった。 視界の端に認めると、安心して再び瞳を閉じる。 「もう大丈夫のようだ」 「有難う御座いました、五代目」 「いや…それにしても、亜種とは…一度あの山一体の生態調査をしたほうがいいな」 「そうですね」 カカシとのやり取りを終えた綱手はまだサクラの枕元に集う二人の下忍に呼びかけた。 「サクラは大事を取って今夜一晩入院だ。お前達ももう帰れ」 「…ついていては駄目なのか?」 「此処は24時間完全看護の木の葉病院だぞ。心配はない」 サスケがどう言って此処へ留まれば良いか思案していると、再びサクラの瞳が開いた。 「サクラ!!」 「…カカシ先生は?」 その時の、サスケの顔を…ナルトは見てしまった。 嫉妬に歪む、その顔を。 「カカシ先生は何処?」 寝た状態のサクラの視界にカカシが映らないのだろう。 サクラはもう一度問いかけたが、サスケが答えるはずもなく、拳を握り締めたままカカシを振り向いた。 「サクラちゃん…カカシ先生もちゃんと居るってば」 ナルトの声に安心して、サクラはにっこりと笑う。 それを見ていた綱手がくすくすと笑った。 「お前…頼りにされてるんだねぇ。意外だったな」 「そういう言い方は失礼というもんですよ、五代目。オレはちゃんと『先生』してますから」 カカシの台詞にサスケが毒付く。 何が『先生』してます、だ。 エロ上忍のくせにッッ 何かが変わってしまったサクラの側でカカシを睨み付けるも、カカシは一向にサスケを相手にしなかった。 余裕の笑みを浮かべてサクラへ近づくと耳元へ口を寄せて囁く。 「サクラ、今日は一晩いい子でここに居るんだ。明日ちゃんと迎えに来てあげるから」 「うん」 いつものように薄紅の頭を撫でて、既に綱手が待つ戸口へと向かった。 「ホラ、お前達も帰るぞ」 いい傾向だ。 カカシは笑いをこらえることが出来なかった。 病院の門を出て綱手と、まだ心配そうに病室を振り返る二人の部下と別れてから足取り軽く家へと向かう。 サクラがサスケと付き合えるよう協力した。 何故って…サクラが欲しかったから。 最初から自分と付き合うように仕向けるのはカカシにとってとても簡単なことだったが、それではサクラがサスケに対する未練を完全に断ち切れないだろう。 自分と付き合っている途中で『やっぱりサスケくんがいい』なんてことにならないように。 カカシはサクラをまずサスケと付き合わせてから奪い取るという方法を選んだ。 さっきの、聞いた? 『カカシ先生は何処?』だって!! サクラは意識していないだろうが、8割がた自分へ心が動いている。 カカシはそう確信した。 もう少しだね。 焦ってはいけない。 優しい、頼りになる先生という立場から意識される『男』へと…ゆっくりゆっくり認識させる。 今度はどんな策を練ろうかと、明るい月夜の下、カカシはにやりと笑った。 「あ…」 トイレへいこうとベッドを降りたサクラの目の前に、壁に掛かった小さな鏡があった。 忍服は脱がされ、身に纏っていたのは入院患者が着る白いスモックのようなものだったが…自分には少し大きすぎたようだ。 ずれ落ちる肩を引き上げようと手を伸ばしたそのわずか下に鬱血した痕が見える。 それはカカシの唇が伝った痕。 月明かりのみの病室に、それはエロティックに浮かび上がっている。 不思議と嫌悪感はなかった。 ただ、自分が大人になれたようで気恥ずかしい。 指で痕を撫でるだけで、サクラはカカシの唇の感触を思い出した。 「…どうして?」 どうして先生はあんなことをしたんだろう? どうして、自分は先生のことばかり考えているのだろう? どうして… どうして……? サクラの夜はまだ明けそうになかった。 謀。某映画のタイトルと同じだけど…アタシは見てません。 友達が「ただの嫉妬深い男の話」だとほざいてました。(爆) 『英雄』が私的になんだかなー…と思う映画だったので、ラバーズ(←某じゃねぇよ)は多分見に行かない。誰かお勧めならご一報くだされ。 レンタルで見るから。(オイオイ) 昨日の夜から書き始めて一気に仕上げました。 人間やれば出来るのよ!! やっぱ気合だね。 カカシってハカリゴトしそうじゃないですか? めちゃくちゃずるいカンジの。(こんなアタシはカカシ至上主義!) 2004.09.23 まゆ 2008.11.30 改訂 まゆ |