Let's study 梅雨も明けたとはいえ、このままで放って置くことはできない。 ずぶ濡れの二人に呆れた視線を向けたまま、カカシはサクラに声を掛けた。 「悪いがサクラ…此処へくる途中に民家があっただろう?そこでコイツ等のためにタオルと着替えを借りてきてくれないか」 「うん。わかった!」 バタバタと駆け出していくサクラの後姿を見送ったカカシは濡れ鼠のような二人を無視して火を付けられそうな小枝を拾い始めた。 「…ちっ」 張り付くシャツに、サスケが舌打ちする。 カカシが熾した火のそばで二人は現在濡れた服と格闘していた。 「もう夏だよ、カカシ先生。すぐに乾いちゃうから着替えなんかいらねーってば!」 躊躇うことなくシャツに続きズボンを脱ぎ捨てたナルトがパンツ一丁の姿で目線にズボンを掲げ、数回軽くはためかせると四方八方へ水滴が飛び散った。 「やめろ、ウスラトンカチが!」 顔に飛んできた水滴を拭いながらサスケが怒鳴る。 その不機嫌この上ない様子にナルトは軽く肩を竦めた。 「悪りぃ」 「…反省してんのかよ?」 「してる、してる」 「………」 そもそも川に落ちた原因はナルトにあるのだから。 咄嗟に救いの手を差し伸べてしまったことをサスケは後悔していた。 苦虫を潰したような表情で顔を背ける。 ナルト同様、脱いだ上着を絞りながら溜息を吐くサスケに、不意にナルトが飛び掛った。 「脱ぐの手伝ってやるってばよ!」 低い体制からのタックルで、ナルトは確実にズボンを狙っていた。 ズボンだけを狙っていたのに…ナルトはサスケのズボンだけではなく、下着までも一緒に引きずり下ろしていた。 足首に絡まるように溜まった下着。 …二人の動きが止まった。 「ボケッッ!!」 一瞬の沈黙の後、サスケが振り向きざまに握り拳でナルトを殴りつける。 しかし、笑いを滲ませたナルトはなんなくそれをかわした。 「サスケって意外と…」 「意外と、何だよ!」 「くぷぷ」 やれやれ、また始まったか… サクラが居ないとすぐこれだ。 少し離れた場所からその様子を見ていたカカシが仲介に入ろうとようやく重い腰を上げる。 「お前らいい加減に…」 「きゃぁー!!」 カカシの諭すような声とサクラの劈く様な悲鳴が重なった。 たった今、戻ってきたばかりのサクラの腕の中から衣類やタオルが次々に落ちていく。 もちろん視線の先はサスケの下半身。 ズボンは下着と共に未だ下げられたままだし…当然、サスケのアレは隠されることなくソコに存在していた。 「先生…話があるんだけど」 サクラに呼び止められて、カカシは出来の悪い作り笑いを貼り付けて振り返った。 「何?」 「うん…聞きたいことあって。此処ではちょっと…」 言葉を濁すサクラに、とうとう来たかとカカシは観念する。 どうせあのことに違いない。 数日前に起きた、『サスケ、ちん●ポロリ事件』だ。 あれ以来、サクラの様子が微妙におかしい。 ナルトは比較的普通なのだが…それでもサスケを見るたびに失笑しては喧嘩に発展させるし、サスケのヤツは以前に輪を掛けて寡黙になった。 故に7班全体がギクシャクして任務もミスが連発。 チームワークどころの騒ぎじゃない。 カカシとしてもこの辺りで何らかのフォローを入れるべきだとは感じていた。 「じゃ…後で家に寄ってくれるかな?オレは先に報告書を出してくるから」 カカシの言葉にわずかに頷いたサクラはペコリと頭を下げてその場を後にした。 洋菓子屋へ立ち寄り、サクラの好きそうなケーキを買った。 二個。 それはもう冷蔵庫へ入れてある。 紅茶も買ったし(ティーパックだけど)お湯ももうすぐ沸く。 準備は完璧…だと思う。 あとはどう話すべきか… 『忘れろ』デショ、やっぱり。 イヤイヤ、此処はひとつ茶化して笑いにもっていくべきか? でもなぁ… 思春期の少女の扱いほど難しいものはない。 ひとつ間違えるととんでもないことになるとアスマは言っていたが… 自分は今まさにそんな場面に遭遇しているといえる。 それにしてもサスケのヤツ…小さすぎやしないか? まだ毛が生えてないことは良しとして。 右曲がりってどうなの!! …アソコの鍛え方も伝授しないとなぁ。 すっかり論点がずれたことに気づかず、あれやこれやとサスケにとっては余計なお世話的なことを考え始める。 数分後、カカシは玄関のチャイムが鳴るのを聞くまですっかりサクラのことは忘れていた。 「こんにちは、センセ」 「…いらっしゃい」 いったん家に戻ってから来たようだ。 サクラの服装はいつもの忍服ではない。 ふわりと裾の広がった黒いワンピースと自分を見上げる翡翠の瞳の組み合わせがなんともコケティッシュで、カカシは一瞬だけドキッとした。 その隙にサクラは玄関の戸を押し広げているカカシの腕の下を潜り、さっさと家の中へ上がりこむ。 慌ててカカシも後に続いた。 お客様用スリッパなど洒落た物はなく、サクラは素足のままペタペタと狭い廊下を進んだ。 突き当たりの部屋のドアが薄く開いていてソファらしきものが見える。 リビングは多分そこだろうとカカシから声が掛かる前に自ら進んでドアをくぐった。 「…座ってて。今、お茶出すから」 「お構いなく」 危険な任務をこなすときもこれほど緊張はしない。 カカシはサクラの前を横切ってキッチンに入ると冷蔵庫の前にしゃがみ込んだ。 そして、2ドアのさほど大きくない冷蔵室を占領していたケーキの箱と…先ほど作ったばかりのアイスティーを取り出しグラスを用意する。 紅茶はさすがにあまり冷えてなかったが氷を沢山入れることで誤魔化しつつ、ケーキと共にサクラへと運んだ。 「わ、ケーキじゃない!食べてもいいの?] 「ドウゾ。サクラの為に買ってきたんだから…残されても困る」 「ありがと!いただきます」 生憎とケーキ皿なんて持ち合わせていない。デザート用の小さなフォークも。 あらぬツッコミを受けることを覚悟していたカカシだが…そこはさらりと流されたようだ。 サクラは普通の皿に無理やり載せられたケーキ二個を、これまた普通に大きなフォークで食べ始めた。 「で、聞きたいことって?」 ガラスのローテーブルを挟み、向かい合わせで座ったカカシが恐る恐る切り出す。 サクラはケーキを口に運ぶ手を止めることなく、左手のみで巻物を突き出した。 何だ、コレ? 禁術書の類でないことはすぐにわかる。 術が掛けられている風もない。 ていうか…サスケのちん●の話じゃ…? 早々とケーキを一つ平らげたサクラはアイスティーで口直しをしてから、やっとカカシの方を見た。 「ソレなんだけど」 「うん」 「違うの」 「何が?」 「広げてみればわかるよ」 そう言われて広げてみるものの…中が見えた途端、カカシは一瞬にして凍りつく。 巻物はアカデミーの教材らしかった。 それも、くの一専用の。 「教科書なのに間違ってるなんて有り?」 イヤ。 基本的には、無し…デショ。 「私、すごく悩んじゃって。だって全然違うし?」 そりゃ…違うって。 「まさかと思うけど…ここ2、3日サクラの様子がおかしかったのって、それが原因?」 「私、態度が変だった?」 無言でこくこくと頷くカカシにサクラはあっけらかんと告げる。 「ごめんなさい。そんなつもりなかったんだけど、サスケくんの顔見るたびに思い出すわ、納得いかないわで…」 要するに、だ。 この巻物に載ってる図と偶然見たサスケのアレが違うとサクラは言いたい訳ね。 カカシは大げさなほどの溜息を吐き、狭いテーブルに無理やり巻物を広げた。 「あのね、サクラ。此処に載ってるのは大人のモノなの。で、サスケはまだ子供。だから違って当然なんだよ」 「ふぅん。じゃ、コレは間違ってないのね?」 サクラが念を押すように、生クリームが付いたままのフォークで突くように巻物の図を指し示す。 その様子にカカシはブルリと身を震わせて言葉少なく返答した。 「…大体」 「先生の見せてくれる?」 「何でそうなるんだ?!」 「いいじゃない。『ホンモノ』を見る良い機会だもの」 「…お断りします」 「お断りします、じゃなくって。生徒の疑問に答えるのは『先生』の勤めでしょう。私はホンモノが見たいのよッ!」 「………」 先生、ってこんなことまでするべきものなのか?! 「火影様に言いつけてやる」 いつの間にか立ち上がったサクラが腕組みをしてカカシを見下ろしている。 その脅し文句に、カカシは頭を垂れて視線を逸らしたが…それはいつまでももつものではなかった。 「往生際が悪い!」 「だって…」 「いいから見せなさいよっ!!」 晒された股間を覆う大きな手を、小さな手が引っぺがす。 「サクラッ」 「…わ!」 まじまじと魅入られて萎縮したソレに、息が掛かるほどサクラは顔を近づけた。 「…小さい?」 「小さいって言うな!オレのは普通サイズだぞ!」 「でもなんか違う」 「あの図は勃ったヤツなの!」 「どうしたら勃起すんの?」 「そりゃー…触られたり舐められたり?とにかく刺激を…って、ヤメロ!!」 ツンツンと指先で突かれて、カカシのモノがピクリと動いた。 「おもしろーい!」 「サクラッ!こういうことは好きな人と…うっ…」 俄然興味津々になったサクラが止めるはずもなく、今度はしっかり握られる。 「こう…だったかな?」 「あ!」 やんわりと手を動かされ、カカシが声を漏らす。 「気持ちイイの?」 「はっ……ぁ…」 「せんせぇ、かーわいぃ」 サクラが無邪気に笑う。 徐々に速さを増すそのリズミカルな動きに耐えようと、カカシは眉を寄せて食いしばる。 でも、無駄な努力だった。 「あ。なんか出てきた…」 「サ、サ…クラッ!駄目だって!!」 片手でカカシのものを握ったまま、空いた手の指先でぬるぬるとするソレを掬い取る。 何を思ったか…サクラは暫く見つめた後、その指ををぱくんと口に入れた。 「うーん。…微妙?」 何が微妙なんだよ! 頼む。 これ以上は……! カカシの願いも虚しく、サクラは強弱をつけて何度も執拗に触れる。 息が上がるカカシに合わせて…それは実に巧妙な手管だった。 そして、2分後。 ここのところご無沙汰だったこともあり、いつもより大目の白濁した液がサクラの手を汚した。 「で、ヤッたんだな?」 「ヤラレたんだっていってるデショ!」 「…馬鹿か、てめぇ。んな言い訳が通用するかよ」 「これってセクハラじゃないのか?!」 「あぁ、完璧にセクハラだ。お前がな」 「嘘だッ!!」 「…ご愁傷様。せいぜい他の奴にバレないよう気をつけるんだな。バレたら間違いなく教員免許剥奪だぞ」 朝一番の上忍控え室でアスマを捕まえたカカシは昨日の出来事を包み隠さず話した。 てっきり自分に同情してくれるとばかり思っていのに、告げられる言葉はどれもカカシを突き放すものばかりだ。 「大体なぁ、『見せて』って言われて素直に見せるヤツがいるか?」 畳み掛けるようにそう言われ、カカシは備え付けの机の上に撃沈した。 「あら、カカシ。こんなところに居たの?」 ぐったりと机に臥せっているカカシの元に紅が現れた。 いつもにも増してダルそうな背中を軽くはたいてその隣に座る。 「…紅か」 「なによ、その脱力した声は」 「聞いて驚け、紅。コイツはなぁ……」 「わーッ!!」 「…騒がしいわね。そんなことより、アンタに用があったのよ。コレをサクラちゃんに渡してくれないかしら?」 慌てふためくカカシを他所に、紅は一つの巻物を差し出した。 「何だよ、コレ。」 「くの一官房術・中級編」 「「はい?」」 野太い男の声がハモった。 「渡せるか、そんなモン!サクラはまだ十二だぞ?!」 オイオイ。 その十二の小娘にお前は何をヤラかしたんだよ… カカシの力説にアスマは心の中で呟き、タバコに火をつけた。 紅を怒らせるのは後々面倒だし、怖い。 アスマは傍観を決め込んで椅子三つ分、こっそりと離れた。 「あ、そ。好きにすれば?でも私はちゃんと渡したからね」 サクラちゃんに嫌われるのはお前だと言わんばかりの台詞にカカシはぐっと言葉に詰まる。 その手にはすでに押し付けられた巻物がしっかりと握られていた。 「昨日の夜サクラちゃんから電話貰ってねー。貸してくれって頼まれたのよ。ホント勉強熱心よね、あの子…って、アンタ…聞いてんの?」 不信感を滲ませた紅の声はカカシには届いておらず、当の本人はといえば…手の中の巻物とにらめっこを繰り広げている。 不埒な巻物の処遇で頭が一杯らしい。 「悩まなくてもいいじゃない。それをサクラちゃんに渡すことで何か困ることでもあるのかしら?」 「………」 確信犯の笑みを浮かべた紅は返答出来ずにいるカカシを無視して、遠くアスマに視線を向けた。 「アスマ、今日の任務の配布、始まってたわよ。そろそろ取りに行かない?」 「…あぁ」 アスマは慌てて立ち上がり、スタスタと歩き始めた紅の後を追いかける。 上忍控え室を出る時、一度だけカカシの方を振り返ったが…カカシはまだ巻物とにらめっこをしていた。 「アイツ、どうすんだ?」 「ほっときなさいよ。子供じゃないんだし。そんなことより任務よ、任務!…今日こそは草抜きから開放されたいわ」 コイツ、完全に楽しんでるな… アスマがカカシに同情の溜息を吐いた時、先を歩いていた紅がくるりと振り返った。 「『可愛かった』って言ってたの」 「はぁ?」 「サクラちゃんが、カカシのことを可愛かったって!」 もう耐えられないとばかりに笑い出した紅を見て、アスマが咥えタバコを床へと落とした。 自分同様、昨日の出来事を知っているらしい紅。 その瞳がキラキラと輝いている。 「今度はどうなるかな?楽しみよねぇ」 その一言にアスマが再び盛大な溜息を吐いたのは言うまでもない。 ちなみにその日のカカシの遅刻の言い訳はもちろん『人生という道に迷って』、だった。 カカシ先生とサクラちゃん、付き合ってないぽいカンジ。(笑) 珍しくサクラ攻め☆ そのうちカカシ攻めバージョンを書きたいなぁと思ってみたり。もちろん裏で。(爆) あ、そういえば…。 サスケスキーのみなさん、ごめんなさい。 右まがりとか書いちゃって。 2004.08.01 まゆ 2008.11.16改訂 まゆ |