暁闇 心臓が…止まるかと思った…… 朝、ちょっとヤボ用があると言って出て行った先生が、アスマ先生と紅先生に抱え込まれるようにして帰ってきた。 全身ずぶ濡れで… 「溺れちゃったのよ。あ、水は飲んでなさそうだから」 紅先生は簡単にそう言ったけれど。 私は先生のこの状態を知っている。 あの時と同じ…そう、波の国でチャクラを使い切った時の先生と同じ。 ホラ…額あてだって左目を隠してない… 「…そうですか」 あからさまにそれ以上のことは聞くな、と紅とアスマの目が語っている。 だから…サクラもさらりと受け流した。 二人にカカシを寝室まで運んでもらい、ベッドへと寝かせる。 着替えを出してきたサクラは後は私が…と、二人には早々に引き上げてもらった。 タオルで水滴を拭き取りながら忍服を剥ぐ。 ただでさえ脱がせにくい大きな身体。その上に濡れた布は肌へと張り付き、サクラの邪魔をする。 「もうッッ!」 つい独り言が洩れるが…カカシは目を覚まさない。 …サクラは力任せにズボンを引っ張った。 いつの間にか握られていた手は…夢を見ているのだろうか…時折、ぎゅっと力が入る。 外はもう暗く、何の明かりもないこの部屋では先生の顔さえはっきり見えない。 サクラは掴まれていないほうの手を伸ばし、そっと青銀の髪を梳いた。 羨ましいわ、紅先生が。 先生と共に戦える女のヒト… 「サ…クラ……?」 「なぁに?先生」 不意に掠れた声がサクラを呼んだ。 「怒ってる?」 「怒ってないよ」 「ホントに?」 「うん。…ただ悔しいだけ」 「…」 「私が知らない所で…先生が写輪眼を使う出来事があった、その事実が悔しいだけ」 「サクラ…」 静かな口調で、でもはっきりと告げられた言葉に女を感じる。 嬉しいような淋しいような…複雑な気分だ。 この様子だと…目を離すとあっという間にオトナになるね、きっと。 「ナルトが里を出たわ。自来也って人と一緒に」 知ってる?とサクラがカカシの顔を覗き込んだ。 「千鳥より凄い術、教えてもらうって張り切ってたよ?」 「ははは。ナルトらしいな。…サクラも知ってる?イチャパラの作者が自来也ってこと」 「えぇ…うそ?!ナルトのヤツ、とんでもない人について行ったんじゃ…」 サクラが青くなったのを見届けてから、カカシはイジワルそうに笑った。 「大丈夫。アレでも三忍の一人だから…ナルトも里へ戻ってくる頃には今よりもっと強くなってるさ」 「三忍…って『木の葉の里の三忍』?」 「そ。腕は確かだよ」 ホッとすると同時に湧き上がるサクラの胸のモヤモヤ。 「ズルイ」 「は?」 「サスケくんもナルトも…二人ともズルイ。いろいろ教えてもらっちゃって…二人だけ強くなって!!」 「…サクラ」 最近、サスケに付きっ切りでかまってやれなかったもんなぁ。 「見てなさいよ?私だってみんながビックリするほど強くなってやるんだから!!」 慰めようと伸びた手は宙で止まり、捨てセリフのようなサクラの言葉にカカシが苦笑する。 「あ!今、笑ったわねッ、先生!」 「くくく。そんなことなーいよ」 「うそ!笑ってるぅ!!」 ムキになるサクラが可愛くて、カカシはゆっくりとサクラを引き寄せた。 まだダルく…あまり動けないけれど、それでも。 腕の中にサクラをすっぽりと収め、耳元に囁いた。 「サクラはサクラだよ。あの二人に合わせる必要はない。サクラのペースでやっていこうよ」 「…ウン」 サクラの微笑が偽りでないと確認してからカカシはゆっくりと目を閉じる。 暫くするとサクラの耳元に規則正しい寝息が聞こえ始めた。 今は休息の時間だよ。 「おやすみ、先生」 アカツキヤミ…月の出ていない明け方の闇 私はその中を手探りで進む。 前方に微かに見える、青銀の光を目指して。 突発ネタ。(笑) ジャンプ47の続き…の、妄想。 48が出るまでの短い時間、楽しんでください。 …だって、本誌でサクラちゃん出ないんだもん。キー!!(怒) 2002.10.23 まゆ 2008.11.16 改訂 まゆ |