追憶




もっと高く

もっともっと、高く





『馬鹿言ってろ。お前にだけはぜってー負けねぇ!』










邪魔するものはもう何もない。
サスケはいつもより近くに見える月を食い入る様に見つめた。
波の国ならではの潮風が汗を吸ったシャツを身体に貼り付けるように吹く。
いっそのこと脱ぎ去ってしまいたかったが…今は腕を上げることすら億劫だ。

隣の木からハアハアと息の上がった呼吸が聞こえてきた。
大きく上下する肩はかなりの疲労度を表している。
袖口で汗を拭うナルトがサスケに向かって吐く息と共にかすれた声を出した。

「…よぉ」
「お前の負けだな」
「だーッッ…ちくしょう!」

ナルトの、頭を抱えて悔しがるその姿を見て、サスケは少しだけ優位に立てたような気がした。
…あくまでも少しだけだが。

「オレは火影になるんだ」

静かな光に照らされて…ナルトが呟く。
小さな子供が憧れているテレビヒーローを見つめるような真っ直ぐな瞳。
あの瞳には何が映っているのだろうと、ふとそんなことを考えてしまった。
あまりの馬鹿馬鹿しさに顔が歪む。

「…そうかよ」

オレはそんなモノに興味は無い。
あるのはただ1つ。



『復讐』という名の………










懐かしさに心が張り裂けそうな夜。
窓の外にはあの日と同じ…大きくて丸い月が出ていた。
思えばなんと遠くまで来てしまったことだろう。
サスケは口の端を吊り上げて皮肉気な笑みを浮かべた後、静かに瞳を閉じた。

そこには…
教師面のカカシが居て、ウスラトンカチのナルトが居る。
サクラがこっちを振り向いて笑った。





それは捨てたはずの記憶

甘い追憶の、日々












オロッチーの元で昔を思い出すサスケ・・・
いくら強くなってもね、サスケはこうであって欲しいというアタシの願望だよー

2006.06.01
まゆ


2008.11.02 改訂
まゆ