memories




「あ」

カカシの突然の声に、三人は動きを止めた。
何かまたろくでもないことを言い出すのではないかと顔を見合わせる。
実にくだらない遅刻の言い訳をついさっき聞いたばかりだったから。

「今日、15日?」

振り返ったカカシが確認するようにゆっくり尋ねた。

「そうだけど」

代表して答えたサクラも眉間にシワを寄せたままだ。
しかも、カカシの返答次第では一発食らわせてやろうと握り拳をつくっている。

「今日…誕生日」

「…誰の?」
「あ、あたしじゃないわよ?!」
「オレは来月だってばよぅ」

「…お前らね。オレのに決まってるデショ」

「え…えぇー?!」
「やだ!ホント?」
「…」

トゲトゲとした空気が一瞬にして消えて、カカシは苦笑いを浮かべた。

「何なんだ、その反応は」

「だって、ねぇ?」
「先生の誕生日って言われてもピンとこないってば」
「あぁ」

「オレだって人の子よ?誕生日ぐらいあるって」

「「「………」」」

「黙るなッッ!…ま、いいや。今日の任務が終わったら皆で一楽のラーメンでも食べに行くか?誕生日ぐらい賑やかに晩飯食べたいしね」

「マジで?!ラッキー!!」
「誕生日なのにラーメンって…」
「…焼肉なら付き合ってやってもいい」

純粋に喜んでいるナルトとその隣で少し呆れ顔のサクラ。
以前よりずっと社交的になったサスケ。

それは…
カカシの、今、一番大切なもの。

「さて、と。そうと決まったらちゃっちゃと任務を終わらせないと!…もう予定より2時間も遅れてるしなぁ」

「「「誰のせいだッッ!!」」」

三人の部下達は声をそろえて反撃したが、それでも律儀に足を速めた。
自分の脇を通り越し…あっという間に置いて行かれる。
彼らの後姿に、過去の自分を重ねてカカシは懐かしく目を細めた。



迷い無く走り出せる『今』が、後にどれほど輝いて見えるかなんて…やっぱり、今のこいつ等にはわかんないだろうなぁ











カカシの誕生日に日記でUPしてたSS。
もったいないので再UP。

2005.12.11
まゆ



2009.05.06 改訂
まゆ