君に会いに行こう 拝啓 修二と彰 二人とも元気ですか? 私は元気です。 昼休みになってすぐ、修二は彰の腕を掴み強引に階段を駆け上がった。 頂上の重い扉を押し開けると青空の広がる屋上へと辿り着く。 俺らは相変わらず高いところが好きだ。 潮風で顔に纏わり付く前髪を軽く払い、ポケットに手を突っ込むと修二はそこから手紙を取り出す。 彰は修二が差し出した手紙を不振気に受け取り、裏の差出人の名前を見た途端、更に眉間にシワを寄せた。 「…なんで修二のトコに野ブタから手紙来んの?」 「ちゃんと二人宛になってんじゃん」 修二が言うように宛名は連名で、『桐谷修二』『彰』様になっている。 これではまるで兄弟のようだが。 「なんで?ねぇ、なんでよ?それってさー、俺んトコでも良くない?」 随分慣れたとはいえ、やっぱり彰は時折すごくウザイ。 修二は絡んでくる彰を身を捩ってかわし、その手から手紙を取り戻した。 「俺にそんなこと言われても…アイツ、お前んちの住所知らねぇんじゃないの?」 「うっそぉ?!」 「いや、マジで。お前…急にこっち来たじゃん?」 親の転勤で引っ越した自分はあらかじめ引っ越し先の住所もわかっていたし、野ブタにも教えていたれど…自分を追いかけるように転校してきた彰は住む場所さえも行き当たりばったりに決めたようで、新しい住所を知らせる余裕は無かったのではないかと思う。 もしくは連絡するのをすっかり忘れていたか… 俺としては後者の確率が高い気がするけどね。 「…そうかも。どうしよう、修二!?」 目を伏せてそう呟いた、次の瞬間には修二の学ランを掴んで喚きだす。 「よし!野ブタに手紙書く。今すぐ書く!!そんで手紙貰う!!」 「わかったから…でも書くのは後にしろ、な?俺はお前と一緒に読もうと思って封を開けずに手紙持ってきてやったんだぞ?ホラ、読もうぜ」 野ブタには彰が付いているから大丈夫だと思っていたのに…野ブタは俺のことの方が心配だったようだ。 自分は一人で頑張ることを選び、彰を俺にくれた。 情けないなって思う。 『プロデュースしてやる』なんて偉そうなことを言っておきながら、最後に助けられるのはいつも自分なのだ。 そんな野ブタからの、便り。 一ヶ月ぶりの『野ブタ』… 彼女は元気でいるのだろうか? 寂しい想いはしていないだろうか? 修二の言葉に彰も大人しくなる。 修二は一呼吸置いてきれいに糊付けされた封の、なるべく端を千切って開けた。 拝啓 修二と彰 二人とも元気ですか? 私は元気です。 懐かしい野ブタの字。 ただそれだけで暖かいものに満たされ…不覚にも涙が零れそうになる。 固まった修二から手紙を取り上げようと彰が横から手を伸ばした。 「何するんだよ!」 「修二ばっかりズルイだっちゃ!!」 「だからってお前そんなことしたら…」 薄い便箋を引っ張り合う二人の足元に、封筒が落ちる。 反射的に目をやった二人は同時に声を上げた。 「「あッッ!」」 どうやら写真が同封さていたようで、素早く拾った彰が封筒の中を覗き込む。 そこには最後まで二人が見ることの叶わなかった野ブタの… 「…彰、ショーック!」 「はぁ?ちょ、ちょっと俺にも見せろって!」 呆然と立ち竦む彰の手から封筒を抜き取る。 中から一枚の写真を取り出した瞬間、修二は息を呑んだ。 喜びは、じわりじわりとゆっくり込み上げてきて。 「…笑ってる!野ブタ、笑えてるじゃん!!なぁ、彰…アレ?」 はしゃぐ修二の視界から消えた彰は足元に小さく蹲っていた。 「俺、嬉しくないだっちゃ」 「…なに言ってんの、お前。野ブタがちゃんと笑えてるんだぞ?!喜ぶところだろ、ここは!」 「だって、一番に見たかったもん!野ブタの笑顔…」 確かにそういう気持ちは俺にだってあるけれど。 本当はお前だってめちゃくちゃ嬉しいだろ? なぁ、彰… 「拗ねんなって」 修二は一緒になってしゃがみ込み、彰の肩をぽんぽんと慰めるように叩く。 「…ソレ、頂戴」 「はぁ?」 「その写真、俺にちょうだい」 そう言うが早いか再び奪い返した写真を手に、彰は修二から猛ダッシュで離れた。 修二が止める間も無く、天に掲げるように持って眺めては何度も口付ける。 「…彰」 「もうこれは俺の野ブタだよーん」 「…お前ってホントに…」 続く言葉は笑い声に混じり消えてなくなった。 修二は手にしたままの便箋に目を落とす。 返事には俺達も写真を送ろう。 いや、ビデオレターにするか? …それとも、いっそのこと会いに行っちゃう?! 幸せな気持ちが拍車をかけて段々と大きくなる計画。 「彰!今度の休み、野ブタに会いに行こうぜ!」 少し離れた場所から、ひゃっほーという彰の雄叫びが聞こえた。 新しい学校には慣れましたか? 二人仲良くしていますか? 日々いろんなことがあるけれど、私は今日も笑って生きています…… とうとう書いてしまった…野ブタ(笑) アタシは彰×野ブタ派ですー 2006.01.04 まゆ |