生命線




昨日、また…ヤンクミの夢を見た。
残酷で愛しい人。
アイツは今、何をしているのだろう?





午前10時。
まだ仕事が始まって間もないとういうのに1回目の休憩がはいる。
こっちの人間って…かなりのんびりとした気質らしい。
慎はセルフサービスの、お世辞にも美味いとは言えないコーヒーを片手に、積み上げた角材の上に腰掛けた。

今日も暑くなりそうだ。

照りつける日差しを目を細めて見る。
見上げれば必ず存在する普遍の空は手を伸ばしたところで到底触れることは出来ないけれど。
それでも。
この澄み渡った青空だけが…オレとヤンクミを繋ぐ、唯一の生命線なのだ。





まだ一度も行ったことのない場所で、やったことねぇ何かをやってみたいだけだなんてカッコつけて旅立ったのに…今だに何も見つけられない。
少しの苛立ちと焦りを持て余し、慎は紙コップに残ったコーヒーを一気に飲み干した。


『しっかり前を向いて探し続けていれば大丈夫だよ』


ヤンクミの真っ直ぐな瞳を思い出す。

でも、さ。
前を向いても…見えるのはお前の背中だけなんだけど。
これって、どうなの?

こんなに離れているのに、なおも彼女に縛られたままの自分に苦笑する。
日本との時差はマイナス6時間。

あっちは夕方か。

ゆっくりと瞳を閉じれば瞼に浮かぶ土手の道。
先頭には楽しげに笑うウッチーと南がいて。
菓子パンをほおばりながら歩くクマとその隣には野田がいる。
…そして。
夕焼けの中、黒い髪をなびかせて振り向くアイツがオレの名を呼んだ。


『沢田!!』










だからね、早く帰ってくればいいんだってば。
慎のいる場所はアフリカなんかじゃなくてヤンクミのそばでしょ。


2005.06.13
まゆ