宣戦布告 アイツを見てたら、オモシロイことが起こりそうだと単純にそう思った。 だから毎日学校へも通ったし、ダルイ授業にも出てたんだよ。 でも、さ。 期待させる何かを持っていた担任の先公は…いつの間にかオレにとって、女になってて。 それに気付いてしまったから。 もう、後戻りは出来ない…… 小学生のガキみたいにはしゃいで一つの缶を追いかける。 夏目前の河原はかなり蒸し暑かったが…そんなこと、こいつらには関係ないらしい。 まぁ、いいよ。 オレも今日はそんな気分だしね。 オニであるウッチーが缶の側を離れた。 すかさず駆け寄って思い切り蹴り上げる。 高く舞い上がった缶は派手な音を立てて水際近くまで飛んでいった。 「何しやがんだ、慎!」 参加しているふうの無かった沢田の、突然の行動に、内山が抗議する。 そんな内山に慎はしれっと言ってのけた。 「…何って、缶蹴りなんだろ?」 「そうだ、そうだ!さっさと缶を探しに行けよ、内山!!」 …って、ヤンクミ。 捕まってたのかよ。 言い返すのは無駄だと感じたのか、内山は舌打ちを残して消えた缶を探し始めた。 リセットされたゲーム。 「慎、ナイス!」 「サンキューな♪」 そんな声がちらほら聞こえ、他にも数人の人影がバラけるのが見えた。 でも隣の女は動かない。 「沢田、よくやったぞ!」 いつものように頭をかき混ぜるように撫でられて苦笑する。 やっぱりこの女には笑顔が一番だ。 学校、辞めさせられなくてホントに良かったと思う。 大事なモンを沢山抱えてるヤツだけど その中でも特別な存在になってみせるから… 「覚悟しろよ?」 両手を空に伸ばして軽く背を反らす。 そう。 勝負はこれからだ! 「え、何?何か言ったか?沢田」 「…別に。ほら、隠れんぞ?」 なんとなく成り行きでついて来たっぽい白金の先公連中はまだ土手の上に居て、こっちを見てる。 その中に篠原ともう一人の刑事、そしてテツを確認した慎はニヤリと笑う。 そして、見せ付けるようにヤンクミの手首を掴むと…強引に走り出した。 「シャンプー、何使ってんの?」 二人で隠れた草むらの中、不意に掛けられた言葉。 息を殺していた久美子はすぐ隣に居る沢田へ顔を向けた。 「な、何してるんだ?!」 「イイ匂いだなって思ってさ」 二つに束ねた髪の片方が沢田の手の中にあった。 指に巻き付けたり、梳かれたり。 男にしては細くキレイな指が久美子の視界を行き来する。 『弄ばれてる』 そんな単語が脳裏に浮かんだ瞬間、久美子の頬が真っ赤に染まった。 沢田と、瞳が、合う。 「馬鹿、やめろって!!」 久美子の制止の言葉など聴く気は無いらしく、沢田は動きを止めない。 彼女の髪は…そのまま彼によって口付けられた。 たかが髪なのに。 異常なまでの動悸の早さが久美子のパニックに拍車を掛ける。 「沢田ッ!」 「ハイハイ。…そんな大声出すと見つかるだろ?」 忠告も虚しく、突然現れた黒い影。 しゃがみ込んでいたオレ達を、ウッチーが上から覗き込んでる。 もちろん、してやったりと満面の笑みだ。 「ヤンクミと慎、見っけ」 そう言うが早いか…オレ達に背を向けてウッチーが走り出した。 さっきまでの雰囲気などカケラも覚えてないとばかりにヤンクミが喚き立てる。 「オマエのせいだぞ、沢田!責任とってアイツより先に缶を蹴って来い!!」 「…了解」 オレは肩を竦めて立ち上がった。 あの手この手でやってみるさ。 この勝負… 相手が誰でも負ける気しねぇんだよ。 猶予期間は、約9ヶ月。 ごくせんドラマ 高3の6月ぐらい? あの名場面…「四人だ!」の回を思い出して読んでいただければ幸いです。 2005.04.29 まゆ |