究極の謎




最も複雑

最も深遠

そして…最も美味な、究極の謎。










「前から思ってたんだけど…それってどうなってるの?」
「あぁ?」
「ピアス。ヨダレとか出てこない?」
「出てくるかッ、ボケ!」
「そーなんだ?でもキスの邪魔になりそう」

吾代が趣味で付けているソレを弥子は心底気の毒そうに眺めている。

「ヤコよ…いらぬ心配をする必要は無い。何故ならそやつには相手がいないからな」
「あ、そうか」
「うるせーよ!…ってか、お前も軽く納得するなッ!なんならテメエで試してやってもいいんだぜ?あぁ?」
「ごめんなさい」

即座に謝られて吾代は複雑な顔をした。
別に本気でキスをしてやるつもりはなかったが、きっぱりと拒否されるのは何故かムカつく。
吾代は椅子を蹴って立ち上がり、たった一つしかない出口へと向かった。

「何処へ行く?」
「メシだよ。メシ!!」

不貞腐れたように言い放ってドアに手をかける。
この化け物といつの間にか確立された主従関係は最悪で…しかも、今後改善される予定はゼロに等しい。
やりあうだけ馬鹿げてるってもんだ。

「ほぅ。またあのコンビニというところか?」
「…中華(ラーメン)だよ」

精一杯の強がりがこれとは情けない。

「え?!中華?ねぇ、それってテーブル回る?ていうか、回してイイ?」
「はぁ?何言ってんだよ、お前…」

弥子の弾んだ声に吾代が思わず振り返れば、彼女は既にこちらへ向かってきていた。
回るのはテーブルじゃなくてカウンターの椅子だっつうの!

「ヤコも行くのか?」
「もちろん!吾代さんの奢りだもん」
「…いつの間にそんなことになったんだ」

会話一つでさえまともに咬み合わねぇ…
お前ら…意思の疎通っつう言葉、知ってっか?

「ネウロはお留守番ねー。だってほら…アンタ、人間の食べ物に興味ないでしょ」
「うむ」
「…オイ?」

今さりげなく『人間の食べ物』って言ったよな?
…ソコはあえて強調するトコなのか?
しかも『うむ』って肯定しやがった…
確かに今までの経緯からどう考えても人間じゃないのは確かだが…

「まぁ、いっか」

吾代は頭を振って雑念を追い払う。
そんなこと今更考えたってしょうがねぇし。
無駄なことすりゃ腹が減るだけ。

「行くぞ」
「うん!」

開けたドアを顎で差せば、弥子が満面の笑みで駆けてくる。
犬っころみたいで意外に可愛い。
自分は案外この笑顔のためにコイツらとつるんでいるのかもしれないとふと思った。
脇をするりとすり抜けて先に階段を下りる弥子の背中を目で追えば、事務所に一人残るネウロが声を発した。

「何を考えている?」

投げかけられた言葉とは裏腹に、全てを見透かしたような眼差しはかなり居心地が悪い。

へいへい。
このガキはアンタのもんってか?

「別に。何も」

吾代は静かに告げてドアを閉めた。










薄暗い階段を降りた二人が通りに現れるのを、ネウロはガラス越しに見ていた。
此処が四階であろうともその気になれば会話の内容すら簡単に聞き取れるのだが…興味は湧かない。
ただ、いかにもチンピラ風のガラシャツと制服の短いスカートがひらひらと角を曲がって視界から消えるまで目で追い続けた。






ヤコよ…我輩が貴様から離れることは無いだろう。
貴様を傍に置くことを望む我輩の心。
それこそが究極の謎なのだから。

この謎が解けたとき一体どんな味がするのか?
それはきっと至福の……



…だから早く戻ってくるがいい…












れおアニキに捧げます。…イヤ、気付かんだろうけどな(爆)

以前、れおアニキとメルだったか…電話だったかで『ネウロやろうぜ!』と盛り上がってたときに書きかけてたヤツです。
ネウヤコってことでしたがアタシ吾代が好きなもんで…こういう仕上がりに(笑)
まぁ、とにかく。
自己満足万歳!てなカンジ(苦笑)

2007.02.12
まゆ